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2024.6.12
木材を扱う際に、含水率の理解は欠かせません。含水率は、木材の性質・状態を大きく左右するからです。
今回は、木材の含水率の正確な求め方や簡易水分計による計測、含水率によって異なる木材の特徴的な状態などを解説します。
木材の含水率について、基本を抑えたい方には有益な情報なので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
含水率とは、木材にどのくらい水分が含まれているのかを表す指標で、乾量基準と湿量基準の2種類があります。
含水率を求める計算式は、次の通りです。
建築用材などでは乾式基準、製材チップなどでは湿量基準を用いることが多いようです。
この記事では、以降、含水率とは乾量基準含水率を指します。
全乾法とは、乾量基準含水率を実際に求める方法で、木材の正確な含水率を求められます。
全乾法の流れは、以下の通りです。
全乾法のほかに、水分計で簡易的に含水率を測定する方法もあります。
木材の含水率を正確に求められるのは、先述の全乾法です。
しかし、恒温器が必要であったり、時間を要したりするため、実務上、個々の製品に対して適応するのは非現実的といえるでしょう。
製材品の含水率を簡易的に管理する場合は、次のような携帯タイプの簡易水分計が使用されます。
それぞれの測定原理や特徴を説明していきます。
絶縁体の木であっても、高い周波数の電界中に置くと電気を帯びる性質を利用した計測器が、高周波式水分計です。
含水率約25〜120%の範囲では、誘電率(蓄える電気量の大きさを示す)は含水率によって変化するため、誘電率を測定すれば含水率を求められます。
高周波式は、材表面から20mm程度の深さの含水率に相当し、断面全体の含水率の平均値に近く、全乾法の値と大きくズレないといわれています。
また、材料を傷つけることなく、素早く簡単に計れるので、近年主流となっている水分計です。
本来絶縁である木材も、水を含むと多少電気を通すようになります。
水分の量によって電気の流れやすさが異なる性質を利用しているのが、電気抵抗式水分計です。
材料に針を打ち込んで電圧を掛け、電気抵抗を計ることで含水率を割り出せます。
針を打ち込むため、木材の用途や部位を選ぶ測定法であることに注意が必要です。
また、木材の温度の影響を受け、含水率が高いと精度が落ちる、表面の値のみしか測定できない、という特徴があります。
マイクロ波透過式水分計は、木材に水の吸収波長のマイクロ派を照射し、透過中に吸収されたマイクロ波エネルギーの度合いから、含水率を見積もります。
木材の中心部まで計測できることが特徴です。
木材の挙動や性質に影響を与える要因の一つが、含水率です。
木材内に存在する水には、細胞の空隙内にある「自由水」と細胞壁内に結合している「結合水」があります。
自由水は、通常の水と同じように流れたり蒸発したりします。
一方、結合水は、細胞壁内で木材と分子レベルで結合しているため性質が異なり、特に結合水の状態によって、木材の性質は変化します。
各含水率における、木材の状態を見ていきましょう。
木が生きていれば、細胞は自由水と結合水で満たされた飽水状態で、含水率は100〜200%程度です。
なお、乾量基準含水率が、100%を超えることは不思議ではありません。
1,000gの木材を全乾して400gになった場合、以下のように求められる含水率は100%を超えていますね。
{(1,000 ー 400 )/ 400}×100 = 150%
飽水状態の木を伐倒した直後は、切り口から水が溢れていることもあるほどです。
伐倒後まだ乾燥させてない状態を生材といいます。水分を豊富に含んでおり、含水率60〜150%程度です。
生材の含水率は、樹種によって、また、部位が辺材か心材かによっても変わってきます。
一般的に、針葉樹は心材に比べて辺材の含水率が高いようです。広葉樹は、樹種にもよるので一概には言えませんが、針葉樹と逆で、辺材のほうが低いものもみられます。
生材状態から時間の経過とともに、自由水が徐々に蒸発し始めます。
伐倒後時間が経つと、自由水は完全に蒸発してなくなり、結合水のみが残っている状態に達します。この状態を繊維飽和点と呼び、含水率は樹種によらず約30%です。
飽水状態から繊維飽和点に移行する際、自由水は蒸発し続けますが、結合水は変化せず、減少するのは繊維飽和点以降です。
繊維飽和点以降も木材を放置すると、結合水の減少が続き、大気中の温湿度に応じた含水率に収束していきます。この状態を気乾状態と呼び、気乾状態に達した木材は気乾材といいます。
地域や季節にも影響されますが、日本における気乾材の含水率は、全国平均で15%程度です。
気乾状態は、空気中の湿度と平衡状態になったことを意味するので、平衡含水率とも呼ばれます。
乾燥させてもそれ以上重量が変化しなくなった時点を全乾状態といいます。
その時の材は全乾燥材と呼ばれ、結合水のほとんどがなくなった状態です。
全乾材は、水分が全くないわけではありませんが、便宜上含水率は0%とされます。
含水率を求める全乾法において、乾燥後重量とするのが、全乾材の重量です。
ただし、全乾状態は、木材を恒温器で乾燥させて得られる一時的なものであり、大気中に放置されると気乾状態まで戻ります。
自由水が全て蒸発した状態である繊維飽和点(含水率30%)から含水率5%くらいまでは、含水率が低下するほど木材の強度は高まることが分かっています。
その理由は、結合水が減少する過程で細胞が収縮し、凝集力が上がるためだと考えられています。
同時に、木材の反り・割れ・ねじれ・寸法減少など、木材を扱う上での不都合な事象も生じ始めるのが、繊維飽和点以下です。
製材のJAS規格は、用途による4種類の製材の含水率を、以下のように区分しています。
品目 | 含水率の基準(%) | 表示記号 | |
構造用製材 | 仕上げ材 | 15 20 | SD15 SD20 |
未仕上げ材 | 15 20 25 | D15 D20 D25 | |
造作用製材 | 仕上げ材 | 15 18 | SD15 SD18 |
未仕上げ材 | 15 18 | D15 D18 | |
下地用製材 | 仕上げ材 | 15 20 | SD15 SD20 |
未仕上げ材 | 15 20 | D15 D20 | |
広葉樹製材 | 10 13 | D10 D13 |
仕上げ材とは、乾燥後寸法仕上げをした製材のことで、最終製品としてそのまま使用可能です。
未仕上げ材とは寸法仕上げをしない製材のことで、使用前の再加工を前提としています。
材としての寸法・精度が高く、建築施工上より望ましい含水率は15%以下、材としての寸法・精度が高く、建築施工上通常使用されるのは20%以下とされています。
伐採後の木材は水分が抜けていく過程で含水率が変化し、同時に木材の状態も変わっていきます。
容易に流動できる自由水が蒸発し切った後の、結合水の挙動が木材の性質に大きく影響を及ぼしており、繊維飽和点より含水率が下がると強度が向上します。
しかしその一方で、反りやねじれ、寸法減少なども起こります。
木材を上手に扱うためには、木材の状態と含水率の関係をきちんと把握しておきましょう。
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