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2023.1.19
今回は、杉の銘木の紹介として「神代杉」を紹介します。神代杉は、秋田杉や京都の北山杉のような、名前に地名を冠したものではなく、その生成過程を名前の由来とするところに大きな特徴があります。決して人工的に作ることのできない、自然の営みのなかで生まれた銘木、神代杉の魅力をご紹介します。
実は神代杉は「埋もれ木」という、古代の樹木が化石になる過程の中で発見、発掘された木材の一種で、埋もれ木として発見された木材のうちその樹種が杉だったものを指します。つまり、埋もれ木として発見された樹種が欅であれば神代欅、楢であれば神代楢、栗であれば神代栗ということになります。
いずれにしても、昔に、生きている木が地震、噴火、洪水等により非常に短い時間で土中、火山灰中、水中等に埋没し、酸素が遮断されることで、菌や虫などによって腐敗することなく、長い年月を経て化石となる手前で発見、発掘された木材のことをいいます。
決して人工的にはつくることができず、生成過程や発掘、発見される過程も偶然によるものが大きいことから、希少価値が高く「神様の時代から眠り続けていた木」という意味から神代という名前が付けられるようになったと言われています。
神代杉の歴史を紐解くと、江戸後期には箱根湖中から掘り出される杉の埋木は神代杉として特別な意味をもっていたとされています。当時から希少性が高く、美しい木目が高級な建築や調度品に用いられていたようですが、特に埋もれ木が銘木と広く認知されるきっかけとなったのは仙台藩の働きかけが大きかったとされています。
1822年に仙台の青葉山で亜炭性の埋もれ木が発見されると、仙台藩がそれを盆、茶托、置物等に加工し仙台埋木と名付けて売り出し、特に観光地の松島では大変人気となったようです。このように、仙台藩が埋もれ木のなかでも特に美しい木材を商品化すると、これらは銘木として認知されるようになり、神代杉も一般的にその名が知られるようになりました。
その後、日本初の近代的国語辞典とされる「言海」 (1889-91) において、埋もれ木を化石状に変じた木幹であると定義すると共に、特に杉の埋もれ木については「神代杉」と区別して定義するに至ったとされています。
埋もれ木は様々な場所から産出されていますが、地殻変動や火山活動などを由来とすることから、伊豆や箱根、富山などにおいて発見、発掘されることが多いようです。そのなかでも特に神代杉としては現在流通するものでは鳥海山麓において産出されるものが多いと言われています。
これは今から約2500年前に、現在の秋田・山形両県にまたがる鳥海山で発生した山体崩落によって、天然の秋田杉が埋もれ木になったもので、大変希少価値の高いものとされています。
さて、神代杉の成り立ちについて理解したところで、木材としての神代杉の特徴をご紹介していきましょう。
神代杉は、長い年月をかけて炭化し、やがて化石になるものです。そのため、木材中の水分や油分が抜け落ち、色味は全体的に暗色を帯びます。暗色にも以下の2種類があり
自然の営みと長い年月によって生み出された独特な風合いが最も大きな特徴です。木目も細かく、磨いたり、オイルを塗ったりして仕上げると、光沢が出てさらに深い味わいを醸し出し、銘木としてふさわしい美しさを纏います。
神代杉の用途としてはやはり、その美しさを存分に発揮する使われ方が一般的でしょう。高級な日本建築の意匠材としてはもちろん、テーブルや座卓などの家具、食器や仏壇などの工芸品、また神が宿るという意味からパワーストーンとして、数珠などが神代杉から作られています。
多くの偶然と自然の営みがつくりだす美しい神秘的な木材、神代杉。ぜひその魅力に実際に触れてみてはいかがでしょうか。
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