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2023.1.25
今回は、日本の代表的な樹種である杉についてご紹介します。太古の昔から日本の地に生育し、森を作り、利用してきたことで数々の建築や道具、技術や文化が育ってきました。そんな馴染み深い杉の生態や特徴、そして有名な杉の銘木についてご紹介するので、ぜひ皆様に杉の魅力を知って頂けたら幸いです。
まず、杉の生態や杉材の特徴、そしてその歴史などを見ていきましょう。
杉はヒノキ科スギ亜科スギ属の常緑針葉樹です。私たちにとってとても身近な樹木ですが、実は日本の固有種であり、学名を「Cryptomeria Japonica(クリプトメリア ジャポニカ)」といいます。一属一種のまさに「日本の木」として世界的に認識されている樹種なのです。
樹冠は円錐形で、生育する地域の積雪量の多寡によって裏杉(日本海側)、表杉(太平洋側)と樹形が異なることが認められています。また、一般的に杉は長寿で、高さが50m、太さは2mからまれに4mほどにもなることがあります。
日本において杉は天然林も存在しますが、環境への適応性が高く、北海道を除く青森県から鹿児島県の屋久島、わずかですが沖縄県まで広く分布しており、日本各地に植林もされています。氷期に日本に分布が確認され、あたたかい西日本を中心に全国に分布を増やしていったとされています。
杉材利用の歴史は、古くは日本書紀にその記述をみることができ、そこではスサノオノミコトが杉材を用いて舟をつくるように教えていたとされています。実際に、縄文時代の遺跡から出土する丸木舟は、杉材で作られたものが一番多いそうです。このように、「直ぐ(すぐ)になる木」が名の由来とされる杉は、木目がまっすぐで割りやすく、加工しやすいことから、古代より生活の中で身近に利用されてきた木材だったのです。
その後、道具の発展と共に弥生時代以降杉材の利用はさらに進み、建築の材料としてだけでなく、曲げわっぱや樽や桶など生活用品としても杉材は人々の暮らしに浸透していきます。また、資源を持続的に利用する目的から、杉は伐採と植林が繰り返され、その過程で林業の技術発展も伴って、現在に至ります。
一方、杉はもっぱら利用されるだけでなく、神社仏閣など畏敬の象徴として、またご神木などとして古くから人々の信仰の対象としても扱われてきました。神社の境内や参道で私たちを見守るようにまっすぐ、大きく高くそびえる杉の木は、まさに神が宿るような荘厳さと偉大さを私たちに感じさせてくれます。
このような自然物や自然現象を擬人化、神格化して崇拝する自然観は、日本独特のものであるとされており、神や命や自然に対する感謝や畏怖、畏敬の念を示す対象のひとつとして杉の木はとらえられてきたのです。
現在でも屋久島の縄文杉や高知の大杉、岐阜県石徹白の大杉など樹齢1000年を超える杉の巨木は、パワースポットとして人々を惹きつけています。
次の章では、日本各地の杉の銘木についてご紹介します。古くから知られる杉の産地から、一般的に流通する杉材のなかでも特に品質が高いとされるブランド杉、また流通量が極めて限られる銘木まで様々紹介します。
日光山内および栃木県日光市、鹿沼市周辺を産地とする杉です。もともと杉の適地であり自然林も多かったとされていますが、約400年前の日光東照宮の建立や松平正綱による日光杉並木の整備などとともに、江戸の豊富な需要に対応して杉を中心とした林業も発展しました。
雪害が少なく太平洋側の気候に適応した通直、完満な材が多く、建築用材として高く評価されているほか、年輪が細かく薄桃色を呈した見た目にも美しい材は建具材などにも広く利用されています。
なお、日光杉並木由来の杉銘木は、文化財として厳格に管理されており伐採は枯損木などに限られるため、一般にはほとんど流通しないとされています。
また、日光杉について詳しく知りたい方は、こちらも参照ください。
奈良県吉野郡の吉野川上流、川上村、東吉野村、黒滝村を中心とする地域から産出される杉材で、当地は日本最古の杉人工林と言われ、その卓越した育林技術の高さから人工林の日本三大美林のひとつに数えられています。
長い幹で節が少なく、木目が緻密で強度が高いとされることから、良質な建築材として豊臣秀吉の大阪城や伏見城建築に利用されたほか、高い意匠性を誇る磨き丸太の生産、また兵庫や京都の酒どころに酒樽の材料としても好んで使われました。
また、吉野杉について詳しく知りたい方は、こちらも参照ください。
屋久杉は鹿児島県屋久島に生育する杉で、江戸時代以降豊富な資源量を背景として天然の杉を伐採する林業が盛んでしたが、経済成長を理由に希少な杉の過度な伐採がすすみました。しかし、1993年の屋久島の世界自然遺産の登録などを契機に屋久杉は厳格な保護の対象とされ、現在は伐採や木材としての流通は厳しく制限されています。なお、縄文杉などとしてパワースポットとして有名な杉の巨木は、樹形のゆがみなどによって過去の伐採を免れたことにより、今まで生き永らえた個体だとされています。
栄養に乏しい花崗岩の上に成立する屋久杉は、一般的な杉に比べ成長がとてもゆっくりとしており、そのスピードは500年で直径40㎝程度にしか成長しないそうです。そのため木材はとても緻密で、細かな年輪の杢目となるのが大きな特徴です。
また、屋久杉について詳しく知りたい方は、こちらも参照ください。
神代杉は、日光杉、吉野杉、屋久杉のような、名前に地名を冠したものではなく、その生成過程を名前の由来とするところに大きな特徴があります。すなわち、「埋もれ木」という、古代の樹木が化石になる過程の中で発見、発掘された木材の一種で、埋もれ木として発見された木材のうちその樹種が杉だったものを特に、「神代杉」と呼ぶのです。
生きている杉が地震、噴火、洪水等により非常に短い時間で土中、火山灰中、水中等に埋没し、その後長い時間を経て偶然に発見、発掘される神代杉は、大変希少価値が高く、神様の時代から眠り続けていた木として、特別に重宝されてきました。
決して人工的にはつくることのできない、長い年月と自然の営みによって生み出された独特な風合いが最も大きな特徴です。
神代杉について詳しく知りたい方は、こちらも参照ください。
杉は、日本を代表する樹種であり、古のころから私たちの暮らしと文化を支えてきた大変なじみの深い樹木です。
屋久杉や日光杉のように、過度な利用や文化財保護の観点から厳格に利用が規制されている杉もあり、ひとえに杉といってもその希少性は様々です。ぜひ杉の魅力を今一度見直していただき、これからも私たちと杉の良好な関係を築いていきたいですね。
森未来では紹介した銘木杉だけでなく様々な木材を取り扱っています。気になる方は、ぜひお問合わせください。
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