森林・木材のお得情報
この記事をシェアする
2023.3.31
木材の腐朽やシロアリからの食害への対策は、木造住宅でより長く暮らすために重要なポイントです。
せっかく快適な木造住宅を建てても、数年後に木材が腐ったりシロアリの被害にあったりしては住み心地を損なうだけでなく地震被害も大きくなる懸念があります。
そこで本記事では
を解説します。
木造住宅や家具など木材と安心して長期間過ごすための対策を知っておきましょう。
目次
そもそも、木材の「劣化」には原因が複数あることはご存じでしょうか?
木材は自然素材のため、何もせずに放置しておくといずれ腐ったり分解されたりして、最終的には土に還ります。
劣化には下記3つが挙げられます。
紫外線劣化は、ほかのふたつに比べると劣化速度が緩やかであり、住まいの内装や構造(柱や梁、土台など)ではそれほど問題になることはありません。
腐朽とは文字通り腐って朽ちていくことです。その原因は「木材腐朽菌」であり、カビやキノコの仲間です。木材の表面や内部に木材腐朽菌が侵入することで木材の成分(リグニンやセルロース、ヘミセルロース)が分解され、腐ってやわらかくなり、最終的に崩れて土に還っていきます。
特に木材に含まれる難分解性の成分「リグニン」を分解する腐朽菌は、森林の分解者として大変重要な働きをしています。
しかし、住まいの耐久性においては大敵となるため、適切な対策が必要です。
木材を食害する昆虫の代表はシロアリです。日本には全部で10種類ほどのシロアリが生息していると言われています。
そのうち、建築材などの木材を食害するシロアリは、下記の3種類です。
これらのシロアリは腸内にセルロースやヘミセルロースなど繊維を分解できる細菌を有しています。細菌の作用によりシロアリは木材から栄養を摂取できるため、住宅でシロアリの生息を許してしまうと、木材がまさに「虫食い」状態となり強度が極端に低下してしまいます。
このような木材劣化を防ぐ方法が、木材の防腐防蟻処理になります。具体的な事例や効果について気になる方は、下の記事もご覧ください。
木材の強度や品質を著しく低下させてしまう木材腐朽菌やシロアリなどは、薬剤によって活動が低下します。本章では防腐防蟻剤である、「農薬系」と「自然素材系」の2種類について解説します。
現在、木材の防腐防蟻剤として一般に広く普及しているのが農薬系の防腐防蟻剤です。
主成分によって下記2種類のように大きく分けられます。
どちらも神経毒として、シロアリなどの昆虫の神経伝達系に作用し、伝達情報が阻害されることにより神経がマヒして死に至ります。
日本では、この農薬系薬剤が標準仕様になっています。
一時期農薬系の薬剤は、住まい手に健康被害を及ぼすとして問題になることがありました。そこで注目されたのが自然素材系の薬剤であり、自然素材系の薬剤によく使用される「ホウ酸」です。
ホウ酸は主に「ホウ酸塩鉱物」を精製して作られます。
無機物のためそれ以上分解されず、対象の木材に塗布しても揮発蒸発することもないため、長期的な効果が期待できます。哺乳類は、腎臓の機能によりホウ酸を体外へ排出させることができるため、ほとんど無害です。
一方シロアリは腎臓がないためにホウ酸を体外へ排出できず、代謝が阻害され、死に至ります。
ちなみに、ホウ酸を主原料とする防蟻剤は、2011年9月に日本木材保存協会の認定を受けたことにより、長期優良住宅認定制度や住宅性能表示制度における劣化等級に対応する防蟻処理剤として利用できるようになり、認知度が向上しました。
欧州諸国では、一般的に風雨に曝されない土台や柱にホウ酸系の薬剤を利用します。
ここまで、各防腐防蟻剤の種類や使用方法についてご紹介しました。
次に、防腐防蟻剤の寿命や安全性などを含めた、メリットとデメリットを紹介します。
農薬系薬剤は最も普及している方法で、低価格であることがメリットです。
薬剤は市販されているためDIYでも可能ですが、「床下など暗く狭い箇所を施工しなければならないこと」、「シロアリなどは人の目が届きにくいところにも被害を及ぼす可能性」があるため、専門業者に頼むのがよいでしょう。
農薬系のデメリットは、効果を発揮できるのが最大5年という期間の短さになります。これは効果が強くなると有毒性も増していくため、薬剤が人体に影響を及ぼしてしまう危険性を鑑みたためです。
また、農薬系のため誤飲してしまうような小さな子どもやペットがご家庭にいる方は注意が必要でしょう。
ホウ酸を用いた防腐防蟻剤の大きなメリットは、効果が長持ちすることです。主成分のホウ酸塩は安定した無機物のため分解されず、また鉱物由来のため蒸発揮発することもありません。
そのため、非接地・非曝露の条件においては、効果は半永久的に持続します。また、人体に無害であり、安全性が高いのもメリットです。万が一日常摂取量を超えるような量を摂取してしまっても、腎臓の機能により排出できます。
デメリットは、水に溶けやすい性質のため屋外使用には向かないこと、施工時の雨に注意する必要があることです。
これまで見てきた通り、木材の防腐防蟻対策はDIYでも対応できますが、下記のような専門業者にも依頼するのがおすすめです。
では、どのような会社が木材の防腐、防蟻処理を行ってくれるか、最後にご紹介したいと思います。
インターネットやチラシなどで見かけることもあるかもしれません。シロアリ駆除業者は、シロアリ駆除などを専門的に行っている業者です。
新築時でなく、リフォームや、すでにシロアリの被害が疑われる場合などに相談するのがよいでしょう。
下記の様な流れで進むことが一般的で、農薬系の薬剤散布による処理が多くなっています。
また、施工価格は業者によって差があるため、複数社で見積もりを取ってみるのがおすすめです。
例えば、ウッドデッキ作成の施工時に使用する木材を加圧注入材メインで扱い、設計施工してくれるエクステリア専門業者もあります。
専門業者に依頼することで、ウッドデッキ作成の施工後にわざわざ防腐防蟻処理をする必要がありません。加えて、加圧注入材を現場で加工した際、無処理の面が露出してしまう可能性を低くできます。
設計段階から相談していれば、施工する場所の環境や材料の寸法に合わせてむらなく加工をしてくれるメリットがあり、安心して依頼できます。
ホウ酸を用いた防腐防蟻剤の製造業者やその施工業者がつくるネットワークも安心して防腐防蟻処理を相談できる相手先です。
たとえば「日本ホウ酸処理協会」では木造住宅への施工において同協会に認定された施工員による責任施工体制を敷いています。
単に薬剤を製造販売するのではなく、施工及びアフターケアまで一貫して品質が保証できる仕組みづくりを行っています。
参考:日本ホウ酸処理協会(JBTA)について|一般社団法人日本ホウ酸処理協会
木のある暮らしや木の住まいづくりを考えたときに心配になる木材の耐久性について、様々な防腐防蟻処理の種類や施工の方法、メリットデメリットを解説してきました。
木材が使われる環境や、コストや施工方法、安全性など、どの要素を優先していくかによってベストな防腐防蟻処理は変わってきます。
ぜひ本記事を参考に、ご自身に最適な防腐防蟻処理を選択して、いつまでも美しく、丈夫で安心安全、快適な木のある暮らしを手に入れてください。
おすすめの記事