住宅の断熱効果を高めるためには?重要性や知っておくべき知識を解説

eTREE編集室

住宅の断熱効果を高めるためには、断熱材を用いてリフォームしたり、窓へ対策したりすることが重要になります。

この記事では、住宅の断熱効果を高める方法を探している方に向けて、

  • 断熱について知っておくべき基礎知識
  • DIYやリフォームで断熱効果を高める方法
  • 断熱の重要性

を解説しています。

効果のある断熱対策をして家族が暮らしやすい住環境を作りましょう。

断熱効果とは「熱の伝達を遅らせる効果」

断熱効果とは「熱の伝達を遅らせる効果」です。断熱効果が高い建物は、1年を通して室内の温度変化が緩やかなため快適な暮らしが実現できます。

つまり、住宅の断熱効果を高めれば、冬は温かく、夏は涼しく過ごせるということです。

断熱と遮熱の違い

「断熱」とよく混同する言葉として「遮熱」が挙げられます。

遮熱とは、光を反射させて温度の上昇を防ぐという意味です。具体例として、日よけのための「ブラインド」が挙げられます。ブラインドは、日差しによる熱が室内に移動する前に、熱を反射させてシャットアウトするため、温度上昇が防げます。

ちなみに「保温」は温度を一定に保つという意味です。

機能としては「断熱」と変わりません。建築用の素材が「断熱材」、工業用の素材が「保温材」と呼び分けられています。

物件取得時はUA値から断熱性能の確認をする

断熱性能を知るためには「UA値」をチェックしましょう。UA値(外皮平均熱貫流率)とは、外皮(住宅の外周)を介して住宅全体の熱がどれくらい逃げやすいのかを示す数値です。

住宅の内部から開口部(床や外壁、屋根など)を通って外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値であり、単位は「w/m2・K」です。UA値が低いほど、省エネ性能が高くなります

2021年4月以降から、省エネ性能の説明義務制度が導入されているので、断熱性能について疑問点があれば建築士やハウスメーカーに問い合わせましょう。

参考:省エネ説明義務制度|国土交通省

【地域別】UA値の基準値

日本は地域によって温度差が激しい為、全国を8つの地域に分けてそれぞれの基準値を定めています。断熱対策を行いたい地域の基準値を確認しておきましょう。

地域区分主な該当都道府県
1北海道
2北海道
3青森県、岩手県、秋田県
4宮城県、山形県、福島県、栃木県、新潟県、長野県
5茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県
6地域区分5と同様
7宮崎県、鹿児島県
8沖縄県
地域区分UA値の基準値(w/m2・K)
10.46
20.46
30.56
40.75
50.87
60.87
70.87
8

8地域(沖縄)は、UA値の基準値が設定されていません。これは年中通して気温が高く、多くの方が暖房を使用しないためです。

さらに、細かく市町村ごとにも地域区分が定められているため、詳細を知りたい場合は以下のサイトで「地域の区分・年間の日射地域区分・暖房期の日射地域区分の地図」をダウンロードして確認してみましょう。

DIYで簡単に断熱効果を高める方法

予算があまり無く、業者による断熱対策が行えないケースもあるでしょう。

そこで、DIYとして個人でできる断熱対策を解説します。

ホームセンターや通信販売などで手軽に入手できるため、気軽に試すことができます。また、アイテムを併用するとより効果的です。

断熱ボードや断熱カーテンによる対策

断熱効果を高めるためには、熱の出入りが激しい窓への対策が重要です。

DIYによる窓への断熱対策は主に以下のようなものがあります。

断熱ボード断熱効果を持つ板。窓のサイズにカットし、窓枠にはめ込む。
断熱ブラインド六角形が縦につながったデザインのブラインド。六角形の中の空気が室内と室外の空気を遮断する。
断熱カーテン裏地に特殊な加工が施されたカーテン。熱がカーテンの反対側に伝わりにくくなっている。
断熱シート窓にはりつけるシート。簡単にはれる気泡状の半透明タイプのものや、紫外線や赤外線をカットするフィルム状のものがある。

それぞれ加工のしやすさや値段が大きく変わります。

予算やDIYスキル、対策したい窓の大きさなどによって変更しましょう。

「隙間テープ」による対策

扉や小窓など小さな部分への断熱対策には「隙間テープ」がおすすめです。部屋中の空気が外に出にくくなり、気密性が増すため、手軽でありながら効果が高いアイテムです。

窓のサッシに貼る場合は、窓枠の横に貼ります。ドアに使用する場合は、ドアと床の隙間をうめるように貼りましょう。

隙間テープには、弾力性があるもの、水に強いものなどさまざまな種類があり、必要に応じて商品を選べるのが魅力です。

リフォーム時にできる断熱方法

次に住宅の部位ごとに断熱リフォームの一例を解説していきます。

部位リフォーム例
複層ガラスや内窓を設ける。
断熱塗料を用いて外壁塗装をする。壁の内側に断熱材をしきつめる。
天井断熱材を天井の骨組みの間に敷く。綿状の断熱材を吹き込んでいく。
床下に断熱材を追加する。

断熱リフォームの費用は、施工部位や面積、工法などによって異なります。一戸建ての住宅全体を断熱化すると多くの費用が必要になるため、施工費をおさえるために部位ごとのリフォームを検討してみましょう。

また、昨今ではSDGsへの関心の高まりから、サスティナブルな建材も注目を集めるようになりました。特に壁の断熱においては、ロックウールやグラスウールといった人工の断熱材を充填するのが一般的でしたが、環境推進国の欧州諸国では木繊維の断熱材も普及しています。

気になる方は、ぜひ、下の記事もご覧ください。

断熱性の高い住宅のメリット4選

断熱性の高い住宅は、住人が過ごしやすく活発に過ごせるだけでなく、さまざまなメリットがあります。ここからは断熱性の高い住宅に住むメリットを解説していきます。

1:光熱費を節約できる

断熱性を高めるためには、相応のコストが必要になります。

しかし、住宅の断熱性が高まり光熱費が節約できれば、断熱対策にかかるコストを回収できます。断熱性の高い住宅に住むことで空調機器の使用が最小限になるためです。また、使用頻度が減ることで、空調機器の寿命も長くなるでしょう。

2:環境に優しい

断熱性の高い住宅に住み、空調機器の使用頻度を減らすことで、二酸化炭素の排出や電気の使用量も同時に減り地球温暖化対策にもなります。

省エネにもつながるため国をあげて「住宅の断熱化」を推進しており、補助金制度も存在しています、主な補助金制度の例が下記の通りです。

  • 既存住宅における断熱リフォーム支援事業(旧呼称「断熱リノベ」)
  • 次世代省エネ建材の実証支援事業
  • こどもエコすまい支援事業
  • 長期優良住宅化リフォーム推進事業

予算の都合で断念した方も、地球環境を助ける意味で、補助金を活用し断熱対策を行ってみてはいかがでしょうか。

3:ヒートショック防止につながる

断熱性の高い住宅に住めば、建物内の温度が均一になりやすく、部屋ごとの温度差も少なくなるため、ヒートショックの防止につながります。ヒートショックとは、温度が急激に変化することで血圧が大きく上下し、心筋梗塞や脳卒中など血管の病気を引き起こす健康被害のことです。

特に「冬の風呂場」で頻発しています。

冬の風呂場は空調のある居住空間と比較するとかなり低く、血圧が下がりやすい傾向にあります。そのため、湯船にすぐ入ることで大きく血圧が変動し、ヒートショックになりやすいのです。

しかし、風呂場に断熱対策を行うことで部屋との温度差を縮めることができ、ヒートショックのリスクを低減できます。高齢者や持病がある人にとって、体の負担を減らせるのは大きなメリットです。

参考:ヒートショックを予防しましょう!|大分県

4:住宅が長持ちする

室内と室外で寒暖差があると結露が発生します。その結果、高温多湿のカビが木材に繁殖するため、建物の劣化が早まる可能性があります。

断熱材などによって熱が伝わりにくくなった住宅は、室内の温度が一定に保たれているため、結露が発生しにくくなっています。住宅を長持ちさせるという意味でも断熱対策は効果的です。

「断熱」の重要性はますます高まる

2025年以降に全ての新築住宅に「断熱性能等級4以上」が義務化されるため、今後も「断熱」の重要性は高まります。これまで、断熱性能等級4は、最高水準の等級でした。しかし、2025年以降は「最低水準」となるため、より高い断熱効果が求められています

新たな等級が設置された背景として、等級4で施工された住宅でも寒さが問題になったことが挙げられます。さらに、2022年10月には、上位等級として等級6や等級7も設置され、受けられる補助金も変わります。

断熱性能の等級改正について詳細を知りたい方は以下の記事もご覧ください。

木造住宅は断熱性に優れている

木材は、コンクリートや土壁など他の建材と比較すると高い断熱性があります

断熱性を測る一つの指標である「熱伝導率」を用いて、建材を低い順に並べ替えたものが、下記です。

構造自体の断熱性は木造住宅が優れています。

  • 木材(ヒノキ・スギ・エゾマツなど):0.12W/(m・K)
  • 木材(ナラ・サクラ・ブナなど):0.19W/(m・K)
  • 土壁:0.69W/(m・K)
  • コンクリート:1.6W/(m・K)

熱伝導率が低いほど熱を通しにくい素材といえるため、木材は断熱性の高い素材であることがわかります。

木材が断熱性に優れているのは「無数の細胞の集合体」だからです。木材の細胞一つ一つは空気で満たされています。空気には熱を通しにくい性質があるため、細胞を持たない他の建材よりも断熱性が高いのです。

まとめ

より高い断熱性能等級が新たに設置され、断熱の重要性はさらに注目を集めています。

断熱対策は、光熱費の削減やヒートショック現象対策など身近な問題への対処にもなりますが、地球環境への配慮にもなります。

国からの補助金を受けとれる場合もあるため、通常より安価に対策が可能になりました。補助金の対象になるのかを業者に確認してみるのもよいでしょう。

また、予算の関係で業者に依頼することができない場合は、DIYとして自分で対策するのも有効です。

森未来は木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。プロの木材コーディネーターが、あらゆる木材の調達や加工をサポートします。木材の調達・加工にお困りであればぜひご相談ください。

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