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2023.6.30
日本では、カーボンニュートラルを目標として、環境関連の新制度立ち上げに力を入れています。そのひとつに、企業も参加できるCO2削減の新制度「Jクレジット制度」というものがあるとご存じでしょうか。
本記事では「Jクレジット制度」の仕組みや普及の課題をわかりやすく解説します。また、Jクレジットの購入方法やよくある質問も紹介するので、誰もが取り組める環境制度について詳しく見ていきましょう。
目次
Jクレジット制度とは、CO2の排出削減量・吸収量を、国が「クレジット」として認証する制度です。例えば、CO2の削減・吸収の成果で得られたJクレジットを使って、次のことに活用できます。
一般的に、環境対策を行うには太陽光発電の設置や省エネ対応の照明設備導入などが必要です。しかし、大幅な費用がかかってしまうことから、準備が億劫になるケースもあるでしょう。一方、Jクレジット制度から資金を生み出せば、環境対策に取り組むハードルを下げられます。
Jクレジット制度を使い、国だけではなく、企業も含め環境対策を実施することによって、カーボンニュートラルの実現を早めるのが狙いです。
Jクレジット制度は、温室効果ガスの排出量または吸収量の増加によってJクレジットを得る「創出者」と、Jクレジットを購入する「購入者」によって成り立つ制度です。Jクレジットは、下図のように温室効果ガスの削減または吸収に資する事業を行う創出者が、Jクレジットの購入者である企業や自治体に売却します。その資金が創出者に還元されることで、Jクレジットと資金の循環を図ります。
出典:J-クレジット制度事務局
このとき、Jクレジットの「創出者」「購入者」の対象になるのが、次のような企業です。
【創出者】
【購入者】
例えば、環境対策に利用できる土地・スペースをもつ企業や、環境対策に取り組む意欲をもつ企業など、Jクレジットを活用して利益を生み出したい主体が「創出者」になります。一方「購入者」は、環境への取り組みを掲げて目標達成を目指す規模の大きい企業などが対象になるイメージです。
以上より、Jクレジットを媒体に、資金の循環と環境対策を同時に実施できることから、環境面・経済面の2本柱を支えられる制度として活用できます。
Jクレジット制度は、環境・経済を両立できる優れた制度ですが、普及にはまだ時間がかかっています。その理由として、「手続きが複雑で売買が成立するのに時間を要する」ことが考えられます。
詳しく見ていきましょう。
Jクレジット制度は、次のような流れで登録・認証が進みます。
例えば、プロジェクト登録申請の際に、計画書作成や妥当性の確認など複数の資料を準備しなければならないこと、類似制度と二重登録ができないことなど申請のルールがとても複雑です。また、Jクレジット制度の認証を受け、売買収入を得るまでに約4年間という長い期間を要します。2回必要となる申請を行うだけで、それぞれ5か月も時間を取られるのが課題です。
Jクレジットは、以下の方法で購入できます。
企業や自治体は、いくつかの方法でJクレジットを購入できます。しかし、利用方法によって取引内容や購入時期、Jクレジットの取引場所が変化すると理解しておきましょう。
Jクレジットの価格は、Jクレジット・プロバイダーおよびJクレジット制度事務局で確認できます。例えば、Jクレジットといった電力関連の統計を行う情報サイト「新電力ネット」では、過去の入札結果をチェックできます。
また、Jクレジット制度事務局では、売り出し中のJクレジットおよび、売り出し予定のJクレジットをリアルタイムで確認できます。
Jクレジットの価格は、仲介業者によって価格が決まるほか、オークションのように入札によって価格が決まります。少しでも安くJクレジットを購入したいなら、複数の売買ページをチェックし、価格を比較するのが望ましいでしょう。
Jクレジット制度は、一般企業でも取り組める制度として知られています。それとは別に、森林整備・管理を行う森林所有者・林業関係者向けのJクレジット制度に「適切な森林管理」によるJクレジットの獲得があります。
林野庁では「森林分野」「木材分野」という2本柱でJクレジット制度を提供しています。林業や木材製造などにかかわる企業としてJクレジット制度を利用したい方は、それぞれの制度内容をチェックしてみてください。
森林分野では、以下に示す3つの方法でJクレジット制度の認証を受けられます。
取得方法 | 対象 | 計算・評価方法 |
森林経営活動方法論 | 森林法に基づき市町村等に認定された森林経営計画に沿って適切に施業されている森林 | 【施業・保護実施面積×ha当たり年間幹材積成長量×拡大係数×(1+地下部率)×容積 密度×炭素含有率×CO2換算係数】 + 【用材出荷量×加工歩留まり×木材の密度×炭素含有率×90年残存率×CO2換算係数】 |
植林活動方法論 | 2012年度末時点で森林でなかった土地で植林された場合 | 以下の2項目で評価・植林活動が実施された樹種・林齢別の面積・植林活動が実施された森林の地位(樹高を計測することで算出される、林地の生産力の指数) |
再造林活動方法論 | 無立木地(伐採跡地、未立木地)及び1齢級(1年生~5年生)の森林 | 施業(再造林)面積×ha当たり年間幹材積成長量×拡大係数×(1+地下部率)×容積密度×炭素含有率×CO2換算係数 |
それぞれ森林を生み出す活動手法が異なります。企業によって活動エリアが限定されやすいため、事前にJクレジット制度の適用条件に合う土地を探したうえで、プロジェクトを立ち上げましょう。
木材分野では、以下に示す燃料・電力を代替することによってJクレジット制度の認証を受けられます。
CO2を生み出しやすい従来の化石燃料・電力を、木質バイオマスを原料とした「木質ペレット」「木質チップ」「薪」に代替することによってCO2排出量を削減できるのが特徴です。設備を導入したことによるエネルギー消費効率から、Jクレジットの評価が行われます。
Jクレジット制度は、まだ開始したばかりの制度です。また、普及途上の制度であるため、分からないことや疑問を抱えている人も多いでしょう。
そこで最後に、よくある質問を3つ整理しました。Jクレジット制度の疑問を解決するために、気になる項目をチェックしてみてください。
結論、Jクレジット制度を利用することで利益を生み出せます。Jクレジット制度事務局が公開しているデータでは、Jクレジットの対象となる「再エネ発電」の平均落札価格が上昇していることが分かります。
出典:J-クレジット制度について(データ集)|J-クレジット制度事務局
現在、世界的に環境対策が取り組まれていることから、今後もJクレジット制度の需要が高まっていくと予想されます。需要が高まるほど落札価格が上昇し、大きな利益を得ることができるでしょう。Jクレジット制度は、企業が儲かる仕組みを実現できるようになっています。
Jクレジット制度に合わせて覚えておきたいのが「温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)」「排出量取引」というキーワードです。
温対法とは、特定排出者(温室効果ガスを多量に排出している事業者)に、温室効果ガス排出量算出・国への報告を義務付ける法律です。国は報告された情報を取りまとめ、公開することとなっています。
また、排出量取引とは、温室効果ガス削減の促進のための仕組みのひとつで、国や企業ごとに設けられた温室効果ガスの排出枠を取引する制度です。国や企業によって異なる温室効果ガスの排出量や削減能力を、取引を行うことでフラットにしていくことが狙いです。
Jクレジット制度は2013年に、以下の環境対策の制度が統合して生まれました。
もともと、カーボンニュートラルを目標とした制度として、2012年まで2つの制度が取り組まれていましたが、類似制度が別々に進行されていたから、2013年に統合されることに決まりました。
Jクレジット制度は、国だけではなく、企業・自治体で協力してカーボンニュートラルの目標達成を目指す制度です。
ただ環境対策を推進するのではなく、Jクレジットによって利益を生み出せるため、マイナスイメージに思われがちな設備導入・代替を効率よく進められるのが魅力です。また、Jクレジット制度は、企業だけでなく、林業や木材製造といった分野でも取り組めます。すでに環境対策へ向けて動いているのなら、この機会にJクレジットを活用してみてはいかがでしょうか。
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