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2023.9.28
古来より日本の建築を支えてきた「木造建築」は、現代の建物にとっても欠かせないものです。身近な存在の木造建築ですが、その定義や特徴をきちんと知る機会は意外とないかもしれません。
今回は、木造建築の基本情報やメリット・デメリット、気になる耐震性や耐防火性、耐久性について解説します。これから木造で家を建てたい人、木造建築に挑戦したい人には欠かせない情報です。ぜひ参考にしてください。
目次
建築構造とは、建物を支える骨組みのことです。構造は、構造体の素材によって「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の大きく3種類に分けられます。
それぞれの構造の基本情報や特徴について、みていきましょう。
木造とは、建物の柱や梁など、建物の主要な骨組みを木材で造る構造を指します。2022年、日本の住宅・非住宅・全ての階数を合わせた着工建築物の床面積のうち、木造が占める割合は約46%ですが、3階建て以下の低層住宅においては、その割合は約8割です。さらに、一戸建て住宅に限ると、木造率(戸数)は約9割に達します。木造建築は、日本における低層住宅に採用される構造の主流といえるでしょう。
鉄製の柱や梁などの骨組みを使用している構造が鉄骨造です。さらに、使う鋼板の厚み6mmを堺に、低層住宅や小規模建築に向く軽量鉄骨造と、中・高層建築に向く重量鉄骨造に分けられます。鉄骨は強度が高いため、柱や壁の数を少なくすることが可能で、大空間や大きな窓・開口部を作りやすい構造です。
鉄筋コンクリート造は、鉄筋の間にコンクリートを敷き詰める構造です。引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリートが、互いを補い合うことにより、強度の高い構造が可能になります。全面を覆うコンクリートのおかげで、耐火性・防音性・気密性が高い特徴があります。一方で、工期が長くなりがちで、建築コストも高い点がデメリットです。
日本における低層住宅は、木造が主流だと後述しましたが、その中にも複数の工法が存在します。住宅の工法とは、構造の組み立て方のことです。
国内木造住宅の主要な工法を、以下に3つ挙げます。
2022年の新築木造住宅戸数において、それぞれの工法が占める割合は、在来工法78.8%、ツーバイフォー工法19.1%、木質プレハブ工法2.1%となっています。それでは各工法について、具体的に解説していきます。
在来工法とは、垂直に立てる柱、水平に渡す梁、斜めに入れる筋交いなど、軸材料で建物の構造を作る工法で、木造軸組工法とも呼ばれます。点を結ぶように造っていき、棒状の木材が、建物の重量や力を受け止めます。
現代の木造住宅で最もシェアの高い工法であり、歴史の中で培われてきた日本古来の方法でもありますが、町家・農家型住宅、社寺建築物の見られる伝統工法とは、基礎・柱脚の工法や、木材の接合部、使用素材など異なる点も多く、全く同じものではありません。
枠組壁工法を代表するツーバイフォー工法は、面を組み立てて構造物を造っていきます。戦後に北米から輸入された工法で、2インチ×4インチの規格材(ツーバイフォー材)が多く使われることが、名前の由来です。規格材で作った枠組に、構造用合板などの面材を接合してできたパネルを、構造の基本とします。荷重を支える役割は壁が担い、柱や梁がないのが特徴です。
柱・梁・屋根トラス・床・壁などの構造部材をあらかじめ工場で生産・加工し、それらを現場で組み立てるだけの建築システムをプレハブ工法といいます。主要構造部材が木材である場合、木質プレハブ工法となります。
工場で生産される部材は精度が高く、施工品質も職人の技能に左右されない点が特徴です。現場作業が大幅にカットされているので、工期が短い点もメリットです。
構造躯体を木材で造る木造建築の大きなメリットは、建築コストが低いことと、環境負荷が小さいことです。どのような理由でそういえるのか、見ていきましょう。
銘木をふんだんに使った木造なら話は別ですが、一般的な木造住宅は、ほかの構造に比べて建築コストが低い傾向があります。建築費の安さは、国内の低層住宅において木造が主流であることの理由の一つです。
2022年における構造別の住宅工事費予定額は、1平米あたり、木造18万円、鉄骨造27万円、鉄筋コンクリート造28万円となっています。
木造の建築コストが低い大きな理由は、基礎工事に手間がかからないことです。木造の骨組みを成す木材は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で使う素材よりも軽いため、基礎工事の手間や工費をカットできるのです。
参考:国土交通省|建築着工統計調査 住宅着工統計 (2022年度)
木造住宅は、カーボンニュートラルな脱炭素社会の実現に貢献する、地球に優しい建築構造です。カーボンニュートラルを目指すには、二酸化炭素を中心とした「温室効果ガス」の排出抑制と吸収促進の両面の対策が必要です。
木材は、空気中の炭素を固定しておける特徴をもち、木造住宅が貯蔵する炭素量は、鉄骨プレハブ住宅や鉄筋コンクリート住宅の約4倍といわれています。
また、木造住宅は、建設時に排出する二酸化炭素量が、鉄骨造・鉄筋コンクリート造住宅の6割程度に抑えられるとされています。
さらに、木材の活用が「伐採→植林→育林」という森林資源の循環利用につながれば、樹木の成長による二酸化炭素の吸収を期待できるでしょう。
参考:公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|建てるのなら、木造で
木造建築のデメリットは、他構造に比べて生物的劣化に弱い点と、防音性と気密性に劣る点です。それぞれ、詳しく解説していきます。
木材を劣化させるシロアリの食害と腐朽菌による腐れは、木造建築の耐久性を低下させる大きな問題です。シロアリと腐朽菌が発生しやすい条件は、共通して「湿潤な環境」であり、被害が同時に進行する場合も多くあります。対応策として、木部と土壌の薬剤処理や、耐蟻・耐腐性能があるヒバやヒノキの土台部分への採用、通風のよい構造、定期的な点検などが、木造住宅には必要になります。
密度の高いコンクリートよりも密度の低い木材は、遮音性能が低いため、鉄筋コンクリート造に比べて、木造の防音性は劣るとされています。また、特に古い木造住宅では、柱と壁の間の隙間が気密性を低下させ、冷暖房効率が悪い場合も少なくありません。
ただし、木造住宅の性能向上や採用している工法、防音材・断熱材の使われ方によっても、防音性・気密性は変わってくるので、あくまで傾向として押さえておきましょう。
木造建築は、ほかの構造に比べて防耐火性、耐震性、耐久性が劣ると思われがちですが、イメージが先行して誤解されている部分も大きいと考えられます。木造の防耐火性・耐震性・耐久性の考え方について、紹介します。
鉄やコンクリートと異なり、木材は可燃物であるため、炎が上がりやすいのは事実です。一度火災が起きると、延焼するリスクは高いでしょう。
一方、火災時、高温にさらされて変形する鉄は、強度が半分に低下するまでに5分もかかりませんが、木材は20分程度かかるというデータがあります。火災発生から避難を完了できるまで、建物の構造を保って時間をかせぐという意味で、木材が必ずしも不利になるわけではありません。
また、近年は、耐火木質部材の開発によって、高層の耐火木造建築も実現していますし、同じ木造でも、在来工法とツーバイフォー工法でも耐火性は異なります。木造だから防耐火性が劣るとは、一括りにいえるわけではないのです。
参考:京都府 農林水産部林業振興課|木の家は火事に弱くないの?
建築物の耐震基準は、建築基準法に基づき定められていて、木造住宅も例外ではありません。現行の耐震基準は、構造の違い、工法の違いに関わらず、震度6強〜7に達する大規模地震にも耐えられる建築物とすることを定めています。
構造や工法に関係なく、設計の工夫によって住宅の耐震性能を高めることは可能であり、木造住宅だから耐震性に劣るということはありません。
木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて法定耐用年数が短いため、耐久性が劣ると誤解されている可能性があります。法定耐用年数とは、不動産の減価償却費用を計算するために、国が定めた一律の数字であり、実際の建物の寿命と等しいわけではありません。
むしろ、適切に設計・施工・維持管理された木造建築は、長く使うことができます。実際、国が定めた認定制度の基準を満たした長期優良住宅は、少なくとも100年程度継続して、構造躯体の使用が可能とされています。また、現代の木造と材料や建て方が異なるので一概に比較はできませんが、世界最古の木造建築とされる法隆寺は、築1300年以上経つ現在も健在です。
実際に、木造で建物を建てる場合の注意点をまとめました。木造ならではのポイントであるため、しっかりと押さえておきましょう。
木造建築に使う木材・木質材料は、さまざまな種類があります。
木材・木質材料 | 特徴 |
---|---|
製材(無垢材) | ・最も一般的・整った加工・施工体制 |
2×4材 | ・主に北米から供給される規格材・近年は国産材もあり |
集成材 | ・無垢材の弱点を解消・品質が均一・必要な強度に応じた部材が揃う |
LVL(単板積層材) | ・ 強度のばらつきが小さい・防虫・防腐など薬剤処理が容易 |
CLT(直交集成板) | ・面で建物を支える大判厚板パネル・中高層建築に対応可能 |
木質ハイブリッド集成材 | ・鉄骨などを木材で覆った材・木材の見た目のまま強度・耐火性能を向上 |
それぞれに、特徴や向き不向きがあるので、用途・施主の意向・予算など、目的に応じた材料を選びましょう。
木造の大敵は、耐久性を低下させる水分と湿気です。水分の多い環境は、先述したシロアリ・腐朽菌の被害が起きやすくなります。
建築後の再塗装や定期的な保守・点検はもちろん、設計段階で、適切な雨仕舞い・防水・通気・換気工法を採用し、水をコントロールすることが大切です。
木造建築を建てる際は、建築基準法の防火規制に注意しましょう。建物の火災から人命や財産を守るために、建築基準法では、用途(病院・学校・飲食店など)、規模(高さ・階数・延べ面積など)、立地(防火地域・準防火地域など)の条件によって、規制を定めています。
求められる措置は、主要構造部の制限(耐火構造や準耐火構造)、屋根・外壁・軒裏の防火措置、内装材料の制限などさまざまです。行政の担当窓口や建築の専門家などから最新情報を確認し、設計・施工を進めましょう。
参考:国土交通省|木造建築関連基準等のあり方の検討(参考資料集)
2050年までにカーボンニュートラルを目指す日本においては、豊富な国内森林資源も相まって、木造建築の重要性は今まで以上に高まっていくと考えられます。
木造建築のデメリットを克服し、さらなる価値を付与するために、官民一体となって進められる新しい木質部材や工法の開発・普及も、木造の可能性をますます広げていくでしょう。
本記事で紹介した情報を参考に、今後も価値が高まると考えられる木造建築にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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