[eTREE TALK vol.1] Part 1/「本物を使いたい」地域材を求めて

2020年4月23日

オンライン開催

4/23(木)、eTREE TALK vol.1「木を空間で使うクリエイターの裏話」をオンラインにて開催いたしました。トークセッションの様子を、全三回に分けてお送りいたします。

ゲストにお迎えしたのは、株式会社KAMITOPEN 代表吉田様と、鳥取県より株式会社サカモト 坂本社長。これまで数々のプロジェクトでタッグを組まれてきたお二人が、木で包まれた空間を作る現場の実態を語ります。

▶︎ゲスト
株式会社KAMITOPEN 一級建築士事務所
代表取締役 / 吉田昌弘
1977年 大阪生まれ
2001年 京都工芸繊維大学工芸学部(岸和郎ゼミ)卒業
2001年 タカラスペースデザイン株式会社入社
2007年 KAMITOPEN 設立
2008年 株式会社KAMITOPEN一級建築士事務所設立
2010年 株式会社KAMITOPEN一級建築士事務所 浅草橋へ移転
2015年 株式会社KAMITOPEN一級建築士事務所 麻布十番へ移転

株式会社KAMITOPEN ホームページ

http://www.kamitopen.com/

▶︎ゲスト
株式会社サカモト
代表取締役 / 坂本晴信
1957年 坂本材木店として創業
1970年 有限会社坂本材木店に組織変更
1976年 鳥取生まれ(12月24日生まれ / やぎ座 A型)
1993年 株式会社サカモトに社名変更
2018年 代表取締役就任
家族は奥さんと4人の子供の6人家族
佐賀大学理工学部化学科卒業後にナイス株式会社で3年研修社員したあと実家の株式会社サカモトへ入社

株式会社サカモト ホームページ

http://woodymind.com/
国産材の製材所。主な商品は智頭杉のブラインド、フローリング、家具など内装材を得意としています。

・鳥取県智頭町
森林面積が93%を占め人工はおよそ7000人。古くからの林業地であり、しっかり手入れをされながら育てられた杉材ヒノキ材が豊富に存在している。町内には原木市場もある。日本で最も美しい村連合にも加盟している町であり疎開保険などの試みもおこなっている。

▶︎進行
株式会社森未来
代表取締役 / 浅野純平

「本物を使いたい」  地域材を求めて

進行/浅野(以下、浅野): 製材業の坂本さんと、ショップの設計をメインにしていらっしゃるインテリアデザイナーの吉田さん。なかなか接点がないと思うのですが、お二人が知り合われたきっかけはどういったものだったのでしょうか。

吉田さん(以下、吉田): 僕はnana’s green teaという、和をコンセプトにしたカフェを設計させてもらっていました。その時の仕事がきっかけでした。

nana’s green tea には「100店舗100デザイン」という方針があり、全ての店舗が違うデザインでつくられています。その理由は、当時チェーン店はどの店舗もデザインが同じでしたが、それはお客さんに対して失礼ではないかと考えたからです。設計者にとっても会社にとっても負担は増えますが、地域に根差したデザインを目指していました。

鳥取県のお店は、nana’s green teaの50店舗目の仕事でした。実はこのお店までは、チェーン展開しているので、デザインは全部違うけれど坪単価はそろえ、投資コストをなるべく抑えようという暗黙の了解がありました。しかし、いざ鳥取でお店を作ることになったとき、もう50店舗も作っているということで、坪単価があがっても構わないから本物の素材を使いたいとおっしゃっていただきました。

浅野: 暗黙の了解を打ち破ったんですね。

吉田: そうです。お客様のほうから、本物を使いたい、とボールを投げていただきました。それを受けて、地域の素材を使ったらいいんじゃないですかとご提案し、施工業者に地元の業者である坂本さんを紹介していただきました。その時に会わせてくれないかとお願いして、お会いしに伺ったのが始まりです。

浅野: 実際に鳥取県の智頭町まで行かれたんですね。

吉田: そうです。半日ほどお話しさせていただきました。

浅野: 初対面で半日って、なかなかですね。

吉田: そうですね。工場見学させていただいて、この人なら頼めるかなと思って始めたのが(一緒に仕事をするようになった)きっかけです。

第一印象は、実はとても良かったんです。

浅野: それ以前に製材所に行かれたことはありましたか?

吉田: はい。僕は製材所に限らず工場も好きなので、売り手側のところに行ってお話を伺うことは結構やっていました。

浅野: その経験をもとに、坂本さんのところに行かれて、ここだったら信頼できると思われたのですね。

吉田: はい。その時坂本さんがどう思われたのかは分からないですけれども。

坂本さん(以下、坂本): なんだか、僕に話を振ってもらったみたいですね。僕が吉田さんに抱いた第一印象は、実はとても良かったんです。

工場見学や会社見学で結構人が訪れるんですけど、意外と皆さんサラッと見て帰られる方が多いです。でも吉田さんはそうではなくて、舐めるように工場を見ていかれた。ほしいものが明確に頭の中にあって、こういうものが欲しいと伝えてくださったので、これだったらどうでしょうかと提案しやすかったです。先ほど半日おられたとお話がありましたが、実際に物を見て、選んで、これとこれでこういう風にします、というところまで当日にほぼ決めて帰られました。ものすごく明確な目的を持って来られている、そんな印象を受けました。また、僕は字も下手だし絵を描くのも下手なので、物を作れるクリエイターってすごいな、と普段から思っています。それもあって、この人と仕事出来たら楽しいだろうなと当時から感じていました。

地域材 智頭の杉を使う

浅野: 吉田さんが最初に、鳥取の智頭町で地域材を使おう、と提案なさったことに関してお伺いします。僕ら木材業界からすると、地域材を使うのは当たり前といいますか、自然な発想なのですが、インテリアデザイナーさんからはなかなか出てこない発想ではないでしょうか。これまでほかの物件でも地域材を使われていたのですか?

吉田: そうですね。特に木は地域材を使います。石などもそうですが、地域の環境で育ってきているので。木でしたら地域材を使うと反りが少ないなどの利点もあります。意匠的というより機能的な面で、地域のものを使ったほうがいいな、という感覚は持っています。

浅野: なるほど、ありがとうございます。では、さっそくお二人の出会いのきっかけとなった物件を見ながらお話ししましょう。ちなみに今日使う資料は全て、KAMITOPENさんのホームページからご紹介させていただきます。こちらがnana’s green tea鳥取店です。坂本さんの木材を使ったのは、個々の天板と丸テーブルですね。

坂本: そうですね。

浅野: 地域材を使おうと考え始めた時から、ある程度もうこういった絵はできていたのでしょうか。坂本さんの製材所に初めて行ったときにイメージはどのくらいできていましたか。

吉田: 先ほど坂本さんには、当時の僕について欲しいものが明確に頭の中にある状態とおっしゃっていただきました。自分では具体的に言った記憶はあまりないのですが、そうかもしれないですね。僕が覚えているのは、初めてお会いしたときに、坂本さんが「この工場には坂本龍一さんも見に来て選んだよ」とお話しなさっていたことです。

坂本: 以前、坂本龍一さんが来られました。坂本つながりで。

浅野: 実は親戚だったとか、そういうオチですか。

坂本: 教授からは息子みたいと言っていただいたのですが、残念ながらそういうオチはないです。坂本さんが主宰なさっている森林保全団体「モア・トゥリーズ」が智頭町に山をお持ちなので、その関係で来られた時に、同じ名前の会社があるということで興味を持ってくださって見学に来られました。教授も、吉田さんのように工場をなめるように見ていかれましたね。

浅野: 話が戻ってしまうのですが、智頭林業や智頭杉の特徴は何でしょうか。

坂本: 世の中では結構間伐材間伐材と言われているのですが、智頭の間伐材はかなり大きくて太いです。直径が20センチから30センチあるものもあります。一本一本丁寧に木材として育てているので。直径30センチが間伐材ですから、その時残しておいた木は直径が60センチから1メートルほどになります。そういう大きな木材を残していくので、樹齢が高く、100年、150年、さらに200年にも達する木材が結構あります。また、林業では枝打ちといって、細いうちに枝を落としてしまいます。そうすると大きくなった時に、ほとんど節がなく、それでいて幅が40~50センチ以上の、例えばこの写真のテーブルでは確か1メートルあるのですが、このような良い材料が結構とれるんです。この大きなテーブルの向こうにある小さなテーブルは柾目で作っていると思いますが、このような柾目がとれる杉を作る林業がある、それがこの智頭町です。柾目がとれる産地は全国的にも多くないです。

浅野: 高樹齢なんですね。戦後の時にも伐採されなかったんですか?

坂本: 伐採はされています。東京や大阪から遠かったことも幸いしているのでしょうか、戦後だいぶ多く持っていってはいるようですが、それでもまだまだ木材があるのがこの智頭町です。

木のテーブルをつくる

浅野: せっかくこんな良い天板があるのでお聞きしたいのですが、寸法としては幅が1000、奥行2,3000ほどでしょうか。

吉田: はい、そんなところです。

浅野: これは三枚を剥いで作られたのですか?

坂本: はい、そうです。

浅野: 吉田さん、こういう大きいテーブルを設計するとき、先に寸法から考えますか。それとも、素材から考えていくこともありますか。

吉田: 本来は素材から考えていくべきなのでしょうが、すみません、この時は寸法で測っていました。

坂本: 素直だ。正直、正直。

浅野: この寸法ですと一枚板で作るのは難しいと思います。この寸法でやりたいのですが、と坂本さんのほうでお伺いした感じでしょうか。

吉田: そうです。実際に高知の木とかも見せていただいて、とてもやりやすかったです。先ほど坂本さんもおっしゃっていたことですが、本当に見に行ったときに思いました。節が少ないな、と。いいところだけ選んでいるわけでは特にないので。

浅野: 坂本さん、図面をご覧になってすぐに、こういう風に作ろうというイメージは沸いたのでしょうか?

坂本: 作り方は三枚剥ぎだなと思いました。この時は製材納期が短かったはずなので在庫の中から、良く乾いていて寸法も適しているものを選びました。実際には設計する吉田さんと物を作る私の間に工務店さん工事屋さんが入ってくるのが常なのですが、今回は自分の住んでいる地域の近い鳥取市で、工務店の方もよく前々から知っている方でしたから意思疎通がしやすかったです。そのおかげで、具体的にこういうものが欲しいという吉田さんのイメージが、ダイレクトに私のほうに伝わってきたのではないかなと感じています。

浅野: なるほど。納期もありきの中で、どの材を配置するか。

坂本: その通りです。

浅野: 私も杉をクライアントに提案することがあります。杉は傷が気になる、と聞かれることも多いのですが、吉田さんはどのようにクライアントに説明されましたか。

吉田: この時はクライアントさんの理解があり、やりたいという意思があったので、あまり説明をしなくても現物を見て納得していただけました。クライアントさんによりけりです。

浅野: この店舗を作ってから、もう四年経っているんですね。実際に傷がつくなどの状態はどのようになっているんでしょうか。

吉田: 僕は見に行けていないのですが、坂本さんは行かれました?

坂本: 一年後くらいに行ったきりです。

浅野: nana’s green tea、似合うじゃないですか坂本さん。しょっちゅう行かれるのでは?

坂本: いやあ、似合いますかね。僕は鳥取に友達がいないのでね。今日は数少ない友達が鳥取から参加してくれているんですけど。

浅野: 鳥取の方で見に行かれた方がいらっしゃれば、コメント欄に書き込みお願いします。

坂本: 僕も今度、見に行きます。

浅野: この柾目の丸いテーブルは、先に図面ができて、それからどう作るか考えていかれたのですか。

坂本: こちらはうちで作ったのではなくて、ほかで作る方がおられたので、そこに材料を供給しただけですね。地元なので、店舗に一番近い家具屋さんがこれを作られたのではないかなと思います。

浅野: この机の赤白が混ざっているようなデザインは、家具屋さん側からこういう風に作りますよと来たのですか?

吉田: いや、この時も実は、椅子が小泉誠さんのもので、これを使いたいと思っていたので、そのデザインが生きればいいなと思って合わせました。

坂本: みごとに合っていますよね。

掲載した店舗写真は全て、株式会社KAMITOPEN公式ホームページから引用させていただきました。

■PART2「「行かんといけない。」天板一枚積んで走る」はこちら

■Part3 デザインは誰でもできる。それを実現させるのは、信頼 はこちら

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