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近年、非住宅木造建築の期待感の高まりに伴い注目が集まっている、最新の木質建築材料、CLT。
このシリーズでは「CLTについて詳しく知りたい」「今後、CLTを使った建築に挑戦したい」という方に向け、基本的なことからマニアックなことまで、CLTの最新情報を全4回にわたりお届けしていきます!
第1回となる今回は、CLTの基礎知識をはじめとし、活用事例やより細かい特徴などについて詳しくお伝えしていきます。
※以下のページにて、2021年3月に視察を行ったCLTツアーの様子をご紹介しています。ぜひ、こちらも合わせてご覧ください。
【現場視察】日本トップクラスのCLTマザーボード製造工場
目次
CLTとは、「 Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイテッド・ティンバー)」の略称で、挽き板(ラミナ)を並べた層を、繊維の方向が直交するように重ねて接着した大判のパネルのこと。
CLTの構造
JAS(日本農林規格)では「直行集成板」という名称で扱われ、中・大規模建築の構造材や、土木産業、一般住宅の床、壁、天井などに幅広く利用されています。
CLTの基本構成は3、5、7層。一般的に奇数枚数を積層します。ラミナ1枚の厚みは基本的に仕上がり30ミリ厚のため、CLTの厚さは30ミリ厚の倍数となります。
最外層に長手のラミナを使用したものを強軸、短手のラミナを使用したものを弱軸とし、使用される部位で使い分けをします。
CLTとRCの比較
CLTのような木質建築材料の特徴は、なんといっても軽量であることです。
鉄筋コンクリート造に比べて、CLTの重量は5分の1以下。
1㎥当たりでは、鉄筋コンクリートが2.4tあるのに対し、CLTは0.5t。
一般的なRC造3階建てとCLT5階建てはほぼ同じ重量で、同じ階数の場合、CLT造はRC造に比べ大幅に基礎コストが削減できます。輸送コストの削減にもつながるでしょう。
CLTは、製造工場等で開口部加工や穴あけ加工まで行うことができ、搬入後、現場では組み立てるだけでOK。乾式工法のため養生期間も不要で、工期が極めて短いのです。また、木造の専門職人依存が小さく、仮設や重機の利用期間も短くてすみます。
CLTを床パネルに利用すれば、従来の木造では困難であった「はね出し」距離の大きなオーバーハング、二方向はね出しオーバーハングも可能です。
CLT構造は鉄骨造やRC造とも相性が良く、鉄骨造+床・壁にCLTパネル、低層RC造+高層部CLTパネル工法はよく見られる混構造です。
木造のオーバーハング
CLTの片面最外層に無地上小材を用いれば、大判の現し面を実現することができます。節ありでの現しも悪くないですが、無地上小での現しは格別です。こうした意匠を実現できるのもCLTの利点です。異等級最高強度であるMx120のCLTパネルを製造する場合は、ひき板強度の高い無地上小ラミナで製造することになるため、結果的に無地上小の現し面を確保しやすくなります。(なお、厳密に無地最外層を指定する場合は選別段階での作業が必要となります)
実際に、地域ビルダー等と連携した取り組みでは、CLTの意匠性に加え、無地上小の大判壁面が確保できる特徴を生かして現し対応を実現し、注目を集めました。
桧無地上小を最外層に配置した現しCLT
「これまでのS(鉄)造やRC(鉄筋コンクリート)造を木造に置き換える」というのが、CLT活用の基本的な考え方。CLTは工場製造されるRCプレキャスト版を思い浮かべていただくとわかりやすいと思います。
特に、CLTの明確なターゲットとなっているのが、製材や構造用集成材、構造用LVLなどでは難しかった中高層建築物構造の木質化。
そして、現在では施工技術と並行して、耐震等構造安全性、防耐火などの研究が急速に発展。日本でも住友林業が木造100階建てビルの構想を打ち出しています。
CLTを用いる木造建築というと、大型の非住宅木造建築が主体にはなりますが、一般住宅でCLTを床、壁、天井に使用した事例もあります。米国市場の木材製品価格高騰で、日本に入荷するSPF2×4工法用製材(Jグレード)価格は急騰。2×4コンポーネント工場の仕入れ価格は12万~13万円(㎥)になっていると聞きます。木材の材料費だけで比較すると、国産材を原材料としたCLTのほうが割安になるのです。
他にも、倉庫をCLT木造とする取り組みもいくつか登場しています。
倉庫は搬入口の開口を大きくとり、軒高を高くし、無柱の大スパン空間を必要とすることから、一般的には鉄骨造となり、通常の軸組木造では難しいとされています。ですが、CLT単体、CLTと構造用集成材、構造用LVL、鋼材等の混構造とすることで、短工期での施工が可能です。
さらに、CLTは構造部位で使用するだけでなく、カウンター部材、階段部材、収納部材、家具など非構造用途での需要創出も可能です。庁舎の窓口カウンター材で45ミリ厚3層の超長尺CLTを納材した実績もあります。ただ、45ミリ厚前後の非構造用CLTを供給できる事業所は一部に限られます。
ここまで、CLTの基礎知識、特徴、活用事例について見てきました。
ここからは、よりマニアックなCLTの知識をQ&A形式でお伝えします!
A. ヒノキ、カラマツ、トドマツといった国産材針葉樹(国内CLT事業所の場合)。スギ・ヒノキのハイブリッドも製造しています。原材料の丸太は製材用には適さないB材です。集成材や合板と、原材料で競合します。
A.CLTを積層するための接着剤には、水性高分子イソシアネート(使用環境B・C)、レゾルシノール(使用環境A・B)、メラミン(使用環境A・B)、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンなどが用いられます。使用環境とは、耐久性能の違いを指しており、CLTを用いる部位で使用環境が異なります。例えば、外部環境に近く建物耐久性能面で厳しい箇所に使用する場合は、使用環境Aのレゾルシノールが一般的です。
中でも主力となるのは水性高分子イソシアネート接着剤でしょう。利点は塗布後、1時間程度の短い養生時間で接着性能を発揮できる点です。一方、レゾルシノール接着剤は10時間以上の養生時間を要しますが、外部環境に近い箇所にも使用できるという利点があります。
CLT製造工場の積層設備の接着剤塗布口は通常1カ所。そのため、頻繁に接着剤を変更することは難しく、洗浄にも手間がかかります。計画的な製造作業が重要となります。
A. CLTのJAS区分には異等級、同一等級があります。これはラミナ強度を指します。CLT強度はSおよびMxで数値化され、強度区分はS(=Same、同一等級)30・60・90・120、Mx(=Mix、異等級)60・90・120があります。各数値は曲げヤング係数です。基準強度は告示(平13国交告第1024号)で規定されています。
A. 防耐火については2つの方法があります。1つは燃え代設計。防火被覆措置を施さなくても、屋内側現しで45分・1時間準耐火構造が認定されており、火災時に部材周囲の過重負担を期待しない木材断面を確保する方法です。そして、もう一つは防火被覆設計。荷重支持部を準不燃材料で覆うことにより炭化を抑制します。
また、CLT建築物は強化石膏ボードを被覆することで耐火建築物とすることも可能です。
CLTに強化石膏ボードを3層被覆した中高層建築床材モデル
2時間耐火性能とすれば、CLTパネルだけで14階建てまでの建築物が可能になります(個別で取得した国土交通省大臣認定を利用)。1時間耐火性能の場合は、告示(平12建告第1399号)が利用できます。
接合金物、ボルトを使用するのが一般的。
接合金物の性能は原則として実験で確認することが求められますが、ルート1の構造計算方法による建物では、公益財団法人日本住宅・木材技術センターで規格化された「クロスマーク金物」を利用することができます。
近年は、接合金物がCLT内に隠れる工法が進んできています。
今回は、CLTについて
・挽き板を繊維が直交するように重ねた大判のパネルであること
・①軽量、②工期が短い、③オーバーハングが可能、④意匠性の高い建築が可能などの特徴があること
・「鉄骨造や鉄筋コンクリート造を木造に置き換える」が基本的な考え方であること
などの情報をお伝えしました。
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次回のテーマは「木材建築のメリットと将来」です。
近年、注目を集める木材建築。CLTも新たな木質材料として木材建築において大活躍していますが、なぜ今、木材建築がそんなにも注目されているのでしょうか?
その理由や、日本における木材建築の今後について、詳しくお伝えしていきます。お楽しみに!
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