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2022.12.26
バイオリンに使用される木材について皆さんご存知でしょうか。優雅な音色と繊細な造形から織りなされる音色は、聴く人だけでなく見る人も魅了してしまいます。
そこで、今回はバイオリンに使用される木材について解説していきます。
目次
バイオリンは、パーツごとに適した木材が使い分けられてます。バイオリン本体のうち、裏板・横板・ネックには「メイプル」が、表板には「スプルース」が使われており、木材の品質は音色や見た目の美しさを大きく左右します。
裏板・横板・ネックに使われるメイプルは、カエデ科カエデ属の落葉広葉樹です。日本語では楓(かえで)ですが、神社仏閣にあるようなイロハモミジのことではなく、25〜30mの高さになるカナダのサトウカエデのような大きな木を指します。
メイプルは、杢目(もくめ)と呼ばれる木目に対して垂直に現れる美しい模様が特徴です。なかでも、縮み杢と言われる波状の縞模様があるものは高品質とされ、バイオリンの工芸的な価値を高めます。
表板に使われるスプルースは、マツ科トウヒ属の常緑針葉樹です。その中でも、日本名で「ドイツトウヒ」や「オウシュトウヒ」と呼ばれる種類がよく使われます。
スプルースはバイオリンの音色を決める重要なパーツで軽いわりに強度が高く、優れた音響特性を備えているとされています。そのため、バイオリンだけでなく、ギター・ハープ・ピアノなどでも古くから共鳴版として使われています。
バイオリンができるまでには、いくつもの複雑な工程が存在しますが、大まかに次の3つに分けられます。
それぞれの工程で、熟練した技を持つ職人の経験や緻密な作業が必要とされます。
バイオリンの材料である木材の品質は、楽器の命である音を大きく左右するため、その選定は重要です。裏板・横板・ネックにはメイプル、表板にはスプルースが使われますが、同じ木でも産地や乾燥期間、木目によってグレードや価格が異なります。産地や卸から仕入れた木材を職人の厳しい目で選別した後、湿度・温度を一定に保った部屋で保管したり、さらに何年も自然乾燥させたりするなど、最新の注意を払って管理します。
高価なバイオリンに使われる木材は、長ければ数十年自然乾燥させることもあるほどです。
バイオリン本体を構成する以下4つのパーツは、高度な職人技で加工されます。
薄く削り、型枠に合わせて曲げた横板は、バイオリンの外周を形造ります。外観の美しさと音響を左右する表板・裏板は、削ってアーチ状に加工し、厚みを調整します。ネックには、滑らかなカーブを描く渦巻きが施されます。
全てのパーツを組み上げたら、白木状態のバイオリンの完成です。どの工程にも、木材の性質を見極める力と、繊細な技術が求められます。
白木バイオリンが完成したら、塗装をして仕上げます。塗装は、そのバイオリンがもつ雰囲気を決定づける重要な工程で、職人が加工したアーチやカーブ、素材の木目の美しさを活かして行われます。
使用するニスの種類や配合、塗り方は職人や工房ごとに異なり、正解はありません。塗っては乾かすの繰り返しで、完成までに30日前後、長いものでは60日かかることもあります。塗装が完了すると、バイオリン独特の美しい輝きが放たれるようになります。
17世紀後半から18世紀前半に活躍したイタリアの弦楽器職人、アントニオ・ストラディヴァリが作った弦楽器を「ストラディバリウス」といいます。特にバイオリンは世界最高峰の名器として有名で、現存する約600挺のストラディバリウスが今も世界中の人々を魅了しています。
ストラディバリウスには300年の歴史があり、その間、壊れたり破棄されたりすることなく、大切に受け継がれてきました。定期的に弾くことが楽器の最大のメンテナンスと言われますが、300年以上もの間、その時代ごとの一流の音楽家に演奏されてきたのです。
ストラディバリウスの唯一無二の音色の秘密は完全には明らかになっていませんが、ストラディヴァリの技術力のほかに、使われている木材の性質も寄与していると考えられています。
ストラディバリが活躍した時代、ヨーロッパは「小氷河期」と呼ばれる寒い気候でした。その当時、寒さが木の成長を鈍化させ、また、年間を通してほぼ一定の気温が密度や年輪を均質にしたことで、まっすぐで目の詰まった材質が生み出されました。
ストラディバリウスは、そのような特徴的な木材で作られています。現在の気候では手に入らない当時の木材はバイオリンの材料として完璧であり、ストラディバリウスの独特の音色を生み出しているのではないかと考えられているのです。
参考:Quora
バイオリンは、それぞれのパーツごとに求められる役割や見た目が異なり、それに伴って材料の木材も使い分けられています。奏でる音色や芸術品とも言える見た目の美しさは、職人の技量はもちろん材料の品質にも大きく左右されるのです。
バイオリンの最高峰、ストラディバリウスの音色のように、当時の木材の性質が大きく貢献しているとされるほど、材料はバイオリンを特徴づける要素の一つなのです。
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