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2023.1.20
今回は、杉の銘木紹介として「屋久杉」を解説します。屋久杉は、鹿児島県にある屋久島の標高500mを超える山地に自生している杉のことを指し、ここは日本における杉の木の南限となっています。
一般的に杉の木は500年余りが寿命と言われる中、屋久杉は2000年を超える巨木が発見されており、神秘的かつそれだけの歴史を持つ杉の天然林であるということで、大変貴重な存在となっています。今回は、銘木としても希少価値の大変高い屋久杉について、ご紹介していきます。
目次
まず屋久杉が育つ屋久島について、その地理的特徴と自然的特徴をみていきましょう。屋久島は1993年に日本におけるユネスコの世界自然遺産に登録され、北海道の知床や青森の白神山地などと並ぶ、大変希少な自然が残る島です。
屋久島は、鹿児島県の大隅半島佐多岬南南西約60kmの海上に位置する島です。熊毛郡屋久島町に属し、近隣の種子島や口永良部島などと共に大隅諸島を形成しています。島の周囲は約130kmで、面積は淡路島よりやや小さく、鹿児島県の島としては奄美大島に次いで2番目、日本全国では7番目の面積の島となっています。
今から約7000年前には人が住み着いたとされ、以降1600年ごろまでは屋久島は漁業や航路上の要地としての位置づけでしたが、豊臣秀吉が京都の方広寺の建立において屋久杉を使用して以降、屋久島は屋久杉をはじめとした森林資源の価値が注目されるようになりました。
屋久島は、九州最高峰の山、宮之浦岳(標高1,936m)を島の中央部に有し、ふもとの海岸付近は亜熱帯性の植生が見られたかと思えば、山頂付近に至れば冷温帯のササ草原や高層湿原が見られるなど、典型的な植生の垂直分布が見られます。この植生の垂直分布は北半球の温帯地域においてほとんど例のない生態系です。
また、「屋久島は月のうち、三十五日は雨」と言われ、年間降水量が8,000mを超える大変な多雨環境です。そのため渓流植物や着生植物といった雨の多い気候に適した特殊な生態系を有しており、これらと樹齢1000年を超える屋久杉がつくりだす原生的な天然林の景観は、世界的にも希少な存在です。このような環境から、屋久島は自然環境保全法に基づく原生自然環境保全地域に指定されており、開発行為などが厳しく制限されています。
現在は開発や伐採などが厳しく制限されている屋久杉ですが、そこに至るまでには長い歴史があります。ここでは、屋久杉と人の歴史について、紹介していきます。
はるか昔、奥山に存在する屋久杉は神聖で信仰の対象でした。そのため長らく屋久杉は伐採されることはありませんでしたが、豊臣秀吉によって屋久島の木材が特別な建築に用いられるようになって以降、屋久杉は年貢にも定められ、屋久杉は伐採、搬出が進められたとされています。
記録によると、この時代、幕末までに5〜7割もの屋久杉が伐採されたと推定されており、その当時ねじ曲がっていて利用価値が低いとされ伐採されなかった屋久杉が現在の縄文杉として残り、当時伐採された杉の跡には小杉と呼ばれている若い屋久杉が誕生して、現在に至るとされています。
参考:屋久杉記念館
明治時代になると屋久島の森林の大部分は国有林となり、屋久杉は経済発展のための開発圧力に大きく晒されることになります。伐採に関わる機械化の導入、木材搬出のための森林鉄道の整備など開発が進み、さらに付近には住民のための学校が設置されるなど屋久杉伐採は島の経済も支えました。
ところが、昭和40年頃になると資源の枯渇や自然保護が叫ばれるようになり、国有林事業は縮小、営林署の閉鎖などが行われ、それまでの開発優先から、保全・保護の必要性が高まります。そして、1993年の世界遺産認定後は屋久杉は厳密に保護され、2001年には屋久杉の伐採は終了しました。
保護されてからの屋久杉の木材の流通は、土埋木のみでした。土埋木とは、江戸時代に伐採された屋久杉が搬出されないまま土の上に放置されたもので、かつて伐採された木材に限って木材市場に出されていたのです。
その後も伐採後の切り株や台風などの倒木に限って、年に2〜3度限られた業者だけが買い付けを行っていましたが、2019年に競り自体も全面禁止となり、屋久杉は現在では新たに入手することは不可能な木材となりました。
現在は入手することが大変難しく、希少な銘木屋久杉。その特徴をご紹介していきましょう。
屋久島は海底に形成されたマグマ溜まりが冷え固まってできた花崗岩が、風雨による浸食よりも速く隆起して、山岳島になったと考えられています。この花崗岩は栄養に乏しく、その上に成立する屋久杉は、一般的な杉に比べとてもゆっくりと成長します。
そのスピードは500年で直径40㎝程度にしか成長しないとも言われ、そのため木材はとても緻密で、細かな年輪の杢目となるのが大きな特徴です。また雨が多く多湿なため抗菌作用のある樹脂成分を多く含み、独特の光沢を有していると言われており、ほかの杉に比べて色が濃く、香りが強いと言われているのも特徴です。
屋久杉を使った工芸は鹿児島県の伝統的工芸品に指定されていおり、流通量は非常に少ないですが、屋久島や鹿児島にある工房では箸やアクセサリー、ぐいのみや皿、テーブルなど様々なものが生産されています。
また、風雨に耐え抜き数千年生き抜いたご神木、屋久杉の生命力は「長寿」の代名詞と言われており、厄が過ぎる「厄過ぎ」という語呂の良さもあり、縁起物とされていることから、屋久杉を用いた仏壇仏具、神棚、数珠なども作られています。
世界自然遺産の島、屋久島に生育する屋久杉の歴史や特徴をご紹介しました。屋久杉は現在伐採が禁止され、流通も厳しく制限されている銘木の中でも大変希少な存在です。人々の営みと自然のパワーを大いに感じられる屋久杉について、興味を持っていただけたら幸いです。
また、森未来では屋久杉ではなく屋久島地杉も扱っております。気になる方はぜひお問い合わせください。
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