森林・木材のお得情報
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2023.4.14
木質空間は、リラックスできたり癒されたり、人にいい影響を与えるとされています。また、その影響が間接的に、経済的・社会的なメリットにつながることもあります。
内装木質化を考えているなら、木質空間ならではのメリットとその活用方法をしっかり押さえておきたいところです。この記事では、内装への木材活用がもたらす具体的な効果を、事例を挙げながら分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
建築物の構造以外の部分、内壁・外壁・床・天井などに木材を使うことを、木質化といいます。その中でも、内装に木材を使用することを「内装木質化」と呼びます。
脱炭素社会の実現のために、国内森林資源の有効活用が模索される中、注目されるのが内装木質化です。
鉄筋コンクリート造の中高層ビルでも、ケースによっては内装に木材を活用できます。内装木質化は、建築材料における木材活用を促進する手段の一つといえるでしょう。
さらに、木質空間には、人の快適さや生産性を向上させる直接的なメリットに加えて、SDGsに貢献する姿勢を示して企業価値を高めるなど、間接的な経済的・社会的効果も期待されています。
木材には、リラックス効果や癒し効果など人の心身に作用する働きや、調湿効果やダニの行動抑制など室内環境を改善する効果があります。
ここからは、内装木質化を実現した建物の事例を6つ、木質空間ならではの効果とともに紹介します。
兵庫県伊丹市の酒蔵通りに面する「タリーズコーヒー伊丹店」は、コーヒーショップチェーンでは珍しい存在です。
歴史ある酒蔵通りの景観に溶け込む木造平屋建ての外観と、木の温かみを存分に生かした内装が地元の人に愛される、地域に調和した建物です。木質空間の居心地のよさは、利用客に「長居したくなる」「また来たくなる」と思わせることで、集客にも貢献しています。
参考:日本デザイン振興会|GOOD DESIGN AWARD 2016
木質空間は、子どもの健全な発達を促す効果が期待されています。
茨城県の「牛久市立第一幼稚園」は、「いばらき木づかいチャレンジ事業」の助成を活用し、地元材を使った木造園舎を実現しています。
内装木質化を実現した施設では、子どものイライラや不快感が抑えられ、集中力を向上させる可能性が示唆されており、無垢材の床・壁・天井に囲まれて、のびのびと活動する子どもたちの姿が見られます。
参考:茨城県 いばらき木づかいチャレンジ事業の事例集を公開しました|牛久市立第一幼稚園
木材を使った寝室では、人は安らぎを感じ、不眠の解消や睡眠の質向上につながるといわれており、宿泊施設にとっては大きなメリットだと考えられます。
日常から離れ、おおいに安らげると感じてもらえれば、リピート利用も期待できます。
愛媛県の「道後温泉 葛城 琴の庭」は、住友林業が手掛け、2021年のウッドデザイン賞も受賞した木造旅館です。県産のスギ・ヒノキを中心に使い、全館で木の香りやぬくもりを感じられる設計です。
参考:道後温泉 葛城 琴の庭
室内での木材の使用量は、心拍数や血圧など人の生理反応に影響を与えることが示唆されています。つまり、木質空間は、人の感覚を刺激してリフレッシュさせたり覚醒させたりする可能性があるのです。
大阪府箕面市の「千里リハビリテーション病院」には、外装・内装ともに木材を豊富に取り入れた棟があります。木材の視覚的・触覚的刺激が患者の五感を刺激し、リハビリに役立っているとの声が上がっています。
木質化された空間では、緊張が続く業務のストレスが緩和されることが確認されています。結果、就業者の業務効率向上、生産性UPにつながる可能性があります。
「福井銀行本店ビル」は、県内の製材所と協力して県産のクロスギを使った建て替えを行いました
緻密さを必要とする業務が多く、職員が負担を感じやすい金融機関では、木質空間のストレス緩和効果に期待が寄せられます。
参考:福井銀行 本店ビル
木のもつ調湿効果は、資料の保存にも役立ちます。木は、湿度が高いと空気中の水分を吸収し、湿度が低いと放出するため、木質空間では湿度の振れ幅が小さくなります。
湿度が一定になることで、人の快適性を高めるだけでなく、収蔵庫において資料の保存にプラスに働きます。
博物学者・南方熊楠が遺した蔵書や資料を保存・公開する「南方熊楠顕彰館」の収蔵庫は、内装に木材が多く使われており、資料をよりよい状態で保存できています。
参考:南方熊楠顕彰館
現在、利用期を迎えた国内人工林の有効活用、林業の活性化、脱炭素社会の実現を目指して、国をあげて国産材の利用が進められています。
林野庁では「木づかい運動」の一環として「ウッド・チェンジ」の合言葉とともに、木材利用拡大の動きが推進されています。
ここまでに紹介した事例以外にも、木質空間を実現した建物は全国に多くあるため、それらを訪れる旅で、内装木質化のメリットをリアルに感じてみるのもおすすめです。
ちなみに、楽天市場・楽天トラベル内には特設サイトが設置され、日本の木を使った商品や建物が紹介されており、中には、サイトからそのまま予約できる木を生かした宿泊施設もあります。
内装に木材を使う場合、国の補助制度を活用できる場合があります。
農林水産省・国土交通省・総務省など制度によって所轄はさまざまであるため、横断的に確認できる「建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧」の活用がおすすめです。
補助制度を設けている地方自治体も、多くあります。
例えば、岡山県津山市では、地域材を使った新築住宅を対象とした補助事業を行なっています。
事業内容は自治体によって変わり、対象がリフォームや調度品の場合、対象者も持ち家の所有者から建築事業者、学校法人などさまざまです。
大部分は年度で申請を区切っているので、制度を利用したい場合は最新情報を入手してみましょう。
参考:
この章では、木を使った内装を実現できる材料を紹介します。
木材そのものだけでなく、木が材料のエコな商品や、内装制限に対応した壁材も紹介するので、参考にしてください。
吉田製材を始めとして複数の業者が製造・販売する「Jパネル」は、無垢の挽き板を繊維方向に直行させて、3層貼り合わせた木材パネルです。
木造軸組工法において、構造材としても内装材としても使用できる汎用性の高さが特徴です。
無垢材がもつ断熱性・調湿機能・意匠性などのメリットは維持したまま、高い寸法安定性と強度を実現した優れた木質材料で、住宅や店舗など多くの建築で利用されています。
岐阜県のヤマガタヤ産業が開発した「Mokkun」は、地域のブランド材・東濃桧(とうのうひのき)の端材を粉砕し、塗り壁の材料としています。
それまでは使い道がなかった端材を、有効活用した商品です。
木材そのものを前面に押し出した建材ではありませんが、材料のヒノキの香りが、ストレス軽減や虫除けなど機能面でも優れた効果を発揮します。
また、ヒノキ以外の材料もすべて自然素材にこだわっており、子どもからお年寄りまで化学成分の心配をせず使えます。
詳しく知りたい方は、下の記事もご覧ください。
大建工業の「グラビオUS」は、見た目は木材でありながら、不燃性を保った壁材です。不燃材「ダイライト」を基材とし、その表面に天然木を貼った構造です。
内装制限がかかる施設でも、天然木の見た目を叶えられる点が強みで、公共施設・医療施設などへの納品実績が多数あります。地域材を表面材に使うオーダーも可能で、地元林業に貢献しながらオリジナルの壁材が実現できます。
木質空間は、よく知られたリラックス効果や癒やし効果だけでなく、多様なメリットを持っています。国内には、飲食店から病院、宿泊施設まで、意図的に内装に木材を取り入れた先進的な建築が多く存在します。
施設それぞれの用途に応じて、木材のメリットをうまく生かした事例を観察すると、多くの気づきが得られるでしょう。国も推進する内装の木質化。先進事例を参考にして、狙った効果を実現できる木質空間を目指してください。
森未来は木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。プロの木材コーディネーターが、あらゆる木材の調達や加工をサポートします。木材の調達・加工にお困りであればぜひご相談ください。
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