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2023.4.28
木材には、人工素材にはない良さがある一方、用途によっては強度不足、寸法が不安定などの欠点もあります。そんな木材の弱点を解消し価値を高める技術が、木材の「強化加工」です。この記事では、強化加工による材質の変化、主な加工方法、市販の強化木材などを解説します。
扱いやすい木質材料がほしい、木製品を長く綺麗に保ちたい、メンテナンスの手間を減らしたいというニーズを満たすヒントが得られるので、ぜひ参考にしてください。
目次
木材は、調湿性や断熱性の高さ、リラックス効果などの長所がある一方で、強度不足、乾燥に伴う狂いや割れ、材質の不均質さなどの短所もあります。
これらの欠点をカバーし、木工・家具・建築材料としての価値を高めるために行われるのが、木材を強化する加工です。
木材強化の方法はさまざまですが、工業的には、接着・塗装・樹脂注入といった合成樹脂を用いて木材のマイナス面を改善することが主流です。木材を強化して得られるメリットには、主に下記5点が挙げられます。
それぞれ具体的に説明していきます。
木材、特に無垢材が扱いにくい理由の一つが、寸法安定性の低さです。木材の寸法安定性を高めることは、木材強化の主要な目的といえるでしょう。湿度が高ければ吸湿・膨張し、湿度が低ければ放湿・収縮する性質は、木材の特徴です。
この性質は、高い調湿性として歓迎される面と、反り・ねじれ・寸法変化として嫌厭される面を持ち合わせています。強化加工の多くは、木材に樹脂を塗装もしくは注入して硬化させることで材への水分の出入りを抑え、寸法安定性の向上を図ります。
軽い割に強度が高いことが木材のメリットでもありますが、強化加工によってさらに機械特性の向上が図れます。木材の内部に樹脂を注入したり、薄い木材に樹脂を含ませながら積層接着したりすることで、細胞空隙が埋まり、強度が向上するのです。
その結果、未処理の木材よりも過酷な環境で使用したり、軟らかい針葉樹を広葉樹と同等に扱えたりするようになります。強化によって、木材の用途が拡大できるのです。
腐ったり、虫害・風化を受けやすかったりする木材は、耐久性の低さも欠点といえるでしょう。
木材強化加工の多くは、材表面を樹脂で保護したり細胞空隙を樹脂で埋めたりすることで、外部刺激から木材を守り、腐朽・虫害・風化を抑制します。
同様に、傷や汚れもつきにくくなるため、美観を長く保つ効果も期待できるでしょう。
木材の耐久性を向上させる処理加工について詳しく知りたい方は、下の記事もご覧ください。
水回りや屋外で使用する際に求められるのが耐水性です。これまで見てきたように、木材強化加工は、樹脂の塗装や注入によって材内部への水分の侵入を防止することで、耐水性を向上させます。同時に、水分を含まないということは、腐朽菌やカビの繁殖抑制につながり、耐久性の向上にも貢献します。
木材強化による耐水性の向上は、水回りや屋外での使用を可能にするなど、木材用途の拡大につながるともいえるでしょう。
日用品から家具・建築材料まで、使用する素材を選ぶ基準として、メンテナンス性は無視できません。新品のうちはキレイでも、すぐに劣化するようでは選ばれにくくなるでしょう。低いメンテナンス頻度で管理できたり、メンテナンス自体が不要になったりする点は、強度や耐久性などが向上した強化木材の大きな価値といえるでしょう。
木材を強化する技術は複数あり、使う物質や加工方法、主な用途もさまざまです。
ここからは、加工技術別に、以下4種類の強化木材を紹介します。
加工方法の特徴や主な用途を、それぞれ説明していきます。
圧密加工とは、加熱したプレス装置で長時間木材を圧縮する加工です。木材が緻密化され、物性値を大きく向上させることができます。化学物質を使わず熱圧縮のみの加工のため、有毒性が一切なく安心安全に木材を強化できます。
森未来では、この圧密木材も取り扱っています。気になる方は、下の記事もご覧ください。
積層強化木は、1mm前後に薄く加工した木材にフェノール樹脂を含浸させた後、複数層に重ねて高温高圧で圧縮加工したものです。
強度・寸法安定性が非常に高く、水が侵入しないので耐水性にも優れた特殊な合板です。
硬化積層材やCompreg(コンプレグ)と呼ばれることもあります。
用途は幅広く、箸やカトラリーの柄などのキッチン用品から、家具、建築材料、絶縁体などの工業部品までさまざまです。切削すると美しい等高線の模様が表れる装飾性の高さを生かして、ペンや刃物柄などに使われることもあります。
木材プラスチック複合材は、木材の導管にプラスチック樹脂を注入し硬化させた材料で、一般的に、WPC(Wood Plastic CombinationもしくはComposites)の略称で呼ばれます。樹脂によって木材を内部から強化する仕組みで、木材とプラスチック両者の性質を合わせ持ちます。
製造工程の複雑さや樹脂自体のコストのため割高な材料ですが、木材の風合いや美観を損なうことなく、機能性を向上させられる点がメリットです。
特に、耐摩耗性に優れる性質を活かして、フローリングや手すり、階段、ボートのオールやスキー板などに使われます。
本来不向きだった用途に木材を使いたい、より機能性の高い木材を探している、という場合に、強化木材や強化剤は選択肢の一つになります。
市場に流通している加工済みの強化木材や個人でも使える強化剤など下記4つを紹介します。
特徴を活かせるよう、それぞれについて詳しく知っておきましょう。
北海道で合板工場からスタートしたニッタクスは、100年以上の歴史と高い木材加工技術をもつメーカーです。ニッタクスが開発、製造販売する積層強化木は「コムプライト」です。
通常の木材の2〜3倍の強度があります。積層接着前の薄い板を、独自の技術で染色した色付きタイプもラインナップされています。
希望の樹種を組み合わせたい、地域材を使いたい、といった要望に対しても、合板作りの豊富な経験に基づいた提案が可能です。
富山県に本社を置き、高付加価値の建築資材を幅広く開発する大建工業株式会社。その商品の一つが、WPCを使用したフローリングです。
多くの人が土足で訪れる大阪城の天守閣にも採用され、25年経過した今も美しさを保つほど、傷・汚れ・凹みに強いことが証明されています。
豊富に用意されたWPCフローリングシリーズ中でも、公共・商業施設向けの「コミュニケーションタフ」は、土足対応で傷・汚れに強く、メンテナンスのコストも抑えられる利点を活かし、学校・オフィス・ホテル・文化施設などに広く使われています。
近年、地球環境に配慮した商品に力を入れているのが、静岡県に自社工場をもつ建材メーカーのトーザイクリエイトです。
同社が販売する、液体ガラスを用いた強化木材「HS Wood」は、人体に有害なホルムアルデヒド、キシレンなどの揮発性有機化合物を一切使わない点で、ほかの強化木材と大きく異なります。
加工工程でも化学物質は使用しないので、人や環境への負担軽減と木材の機能向上を両立した優れた素材といえます。
ここまで紹介した強化木材3点は、すでに強化加工済みの商品です。木工やDIYなど、自分で木材の強化加工をしたいケースもあるでしょう。そんなニーズを満たすのが、特殊塗料を手掛ける寿化工の「木固めエース」です。
浸水性を抑えて木質を強化する浸透性のウレタン塗料を、個人でも扱いやすい仕様に落とし込んだ商品です。
食器やカトラリーに最適ですが、家具、楽器、おもちゃなどにも幅広く使えます。
ただし、未開封でも硬化しやすいため、基本的に実店舗での販売は行っておらず、オンラインショップでの購入になる点は注意が必要です。
強化加工は、木材の価値を高め利用の幅を広げます。
加工方法は複数ありますが、高度な技術や大規模な設備が必要な加工は工業的に施され、強化加工済みの材料が市場に流通しています。通常の木材と比べて価格が高いことがほとんどですが、メンテナンス性の高さを考えると一概に割高であるとはいえないでしょう。長期的なコストも視野に入れて、最適な材料を選択したいものです。
一方、個人でも利用できる木材強化剤は、ホームセンターでも購入可能です。木材の強度や寸法安定性を大幅に高めるほど強力な効果は見込めませんが、防水性・防虫性・耐候性などを向上させる塗料は種類も豊富にあります。
森未来は木材情報を集約したプラットフォーム「eTREE」を展開しています。プロの木材コーディネーターが、あらゆる木材の調達や加工をサポートします。木材の調達・加工にお困りであればぜひご相談ください。
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