森林・木材のお得情報
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2023.6.7
徳島県は長い林業の歴史を持ち、豊富な森林資源を有する県です。
古くから植林が進んだことで県内の多くの森林が主伐期を迎え、その活用促進が大きな課題になっています。
本記事では「徳島県の木材事情について知りたい」「徳島の県産材を活用したい」と考える方に向けて、徳島県の県産材の状況や利用拡大・普及促進の取り組みなどを解説します。
目次
徳島県は県の面積のうち、75%を森林が占めていますが、明治期始めに藩有林の大部分を民間に払い下げたため、県の森林の内89%が私有林です。また、植林が古くから行われてきたために、人工林面積が多いのも特徴です。
個人所有の人工林が多いことで管理放棄や境界の不明瞭化などの問題が生まれます。そのため徳島県では、森林に放置されている、主伐期を迎えたスギやヒノキなどの活用方法が現状の課題になっているのです。
徳島県においてはスギ人工林の割合が64%と高く、全国1位となっています。このことを受けて徳島県では、1980年代になるとスギ材のブランド化を図るため、県産スギを「徳島すぎ」と名付けました。現在、産学官が連携して技術開発や販路開拓が行われ、全国展開を進めています。
スギは水分の多い環境を好んで生育する樹木です。徳島県は暖かく雨の多い気候で土壌も比較的肥沃であることから、スギの植栽に適した土地です。また、焼畑跡や薪炭林の伐採跡地にスギが植えられてきたことから、スギの造林が拡大してきたと考えられています。
代表的な県産材であるスギの多くが主伐期を迎え、利用促進への課題を抱える徳島県では、県産材普及に関して、段階に応じたさまざまな取り組みを行っています。徳島県で行われている代表的な取り組みについて解説します。
徳島県では、森林資源の積極的な利用を通じて、自然環境と森林からの恩恵を持続的に将来へとつなげていくために「徳島県県産材利用促進条約」を定めました。
平成25年に施行された条例は、県産材の利用をうたう条例としては全国初のものです。
徳島県県産材利用促進条例の基本理念の内容は以下の通りです。
事業活動の際には、この基本理念に基づいた計画を行うことや、県の公共事業については、基本的に県産材を用いた木造建築にすることなどが定められています。
平成22年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を受けて、徳島県では「とくしま木材利用指針」を策定しました。
その後、平成27年度には、森林・林業を核とした地方創生の実現を目指して、県外や海外での県産材利用拡大を追加した「とくしま木材利用指針」に改訂されています。
「とくしま木材利用指針」の中で、公共建築物に関して以下のことが明記されています。
平成27年度に、前述の「とくしま木材利用指針」が改訂された背景には、10年後を見据えた「新次元林業プロジェクト」への取り組みが始まったことにありました。
「新次元林業プロジェクト」は、平成17年から徳島県が進めてきたスマート林業での取り組み成果を基に、令和6年度の県産材生産量を4倍、60万立方メートルに高めることを目指したものです。
川上から川下までの施策を細かく設定することで具体的に実現を図っていくところが特徴的なプロジェクトになっており、徳島県から全国へ発信する、林業を核とした「地方創生」のモデルとなる取り組みです。
令和元年度に策定された「スマート林業プロジェクト」は「新次元林業プロジェクト」で設定された県産材生産量の目標値をさらに拡大し、令和10年度に70万立方メートルにすることを目指したものです。
これは時代と共に変化する環境と、スマート林業における新たな課題に対応するために策定されました。川上、川中、川下で顕在化している課題に対する施策の概要は以下の通りです。
【川上】
【川中】
【川下】
徳島県では、県産材の活用に関して補助金や助成金の面からも利用拡大を目指しています。徳島県で行われている補助金などの代表的なものを紹介します。
徳島県の県産材を利用して造られた、展示効果が高い店舗や事務所などの建築物に対して、使用面積に応じて助成する事業です。1施設当たりの上限は40万円となっています。
事業の概要は以下の通りです。
【応募期間】
令和5年9月29日(金)午後5時まで
【助成のための条件】
参考:森を活かす徳島すぎ利用推進事業|徳島県木材協同組合連合会
令和3年に新たな木育拠点として「徳島木のおもちゃ美術館」が開館しました。
そのことを受けて、徳島県は「とくしま木づかいプロダクト開発等支援事業」を実施し、木のおもちゃを始めとした県産材を活用した新たな製品の開発と普及を支援しています。
この事業は、県産材を活用した製品開発を行い、かつその製品を徳島木のおもちゃ美術館などで展示する場合に、補助を行うものです。
事業の概要は以下の通りです。
【応募期間】
令和5年6月30日(金)午後5時まで
【補助率】
補助の対象となる経費の1/2以内(上限50万円)
【対象事業者】
県産材を用いた商品の開発に取り組む県内の事業者
徳島市では、市内の店舗などで木質化をする場合にかかる経費の一部補助を行っています。
この事業によって、市内の県産材活用と木質化を促進させること、そして市民が日常的に木に触れることができ、森林に親しみを持つ機会を造りだすことを目指しています。
事業の概要は以下の通りです。
【対象者】
市内に新たに店舗を建てる、もしくは既存の店舗を改修する、テナント事業者または物件所有者
【要件】
【補助率・上限】
補助対象経費の1/2以内(上限100万円)
参考:令和5年度徳島市テナント店舗等木質化モデル創出事業補助金|徳島市
徳島県内には、独自のやり方で県産材普及に取り組む事業体があります。
テレビなどでも取り上げられる、その取り組みについて紹介します。
徳島県徳島市に会社を構える岡元木材株式会社の取り組みは、NHKでも取り上げられた革新的なものです。
「ウッドショック」で世界的に木材の供給が不足する中、岡元木材株式会社では、県産材の活用に取り組みました。相場よりも4割程度も価格を抑え、必要な木材を10日ほどで届ける取り組みは、これまで木材業界には無かった「オンデマンドシステムの構築」とも言えるでしょう。
岡元木材株式会社が商社の役割を果たし、木材の注文を受けてから林業者に木材の発注を行うと、条件が揃えばその日のうちに山から製材所へ必要な木材が下ろされます。製材所は、岡元木材株式会社が廃業の危機だった事業を受け継ぎ、国内数台という大型機械を導入した場所です。その結果、これまで3か月程度かかっていた木材の乾燥を3日に短縮でき、中間業者を介さないことでコスト削減も実現しました。
令和3年、徳島県の木の伝統や文化を幅広い世代に広めるため「徳島木のおもちゃ美術館」が開館しました。徳島県立あすたむらんど内に位置し「0歳から100歳まで楽しめる」をコンセプトにした美術館です。
県産材をふんだんに使用したおもちゃで遊べることはもちろん、国の重要伝統的建造物保存地区でもある「うだつの街並み」を再現したコーナーや、県産材を活用した内装、家具などで、徳島県の木をまるごと体感できる施設になっています。
参考:徳島木のおもちゃ美術館
ここからは、徳島の県産材を活用した建築物の代表的なものを紹介します。
平成25年に県下最大規模の職業訓練校として開校した「徳島中央テクノスクール」は、中小企業の総合的な応援拠点として人材育成機能も担っています。
徳島中央テクノスクールの多目的ホールは木造で建設され、その内壁にはすべて「徳島すぎ」が使われています。多目的ホールの収容人数は300人で、講習会や研修などで多くの人が利用可能です。さまざまな人が出入りするホールの内壁に県産材を利用することで、多くの利用者に「徳島すぎ」の良さをアピールできる施設となっています。
徳島県名東郡佐那河内村にある佐那河内小学校・中学校では、敷地南側を流れる園瀬川流域にある村有県行造林で伐採されるヒノキ間伐材を床材として利用しています。
間伐材は、建築などの需要と関係なく、手入れの一環として木の適期に合わせて伐採されます。佐那河内小学校・中学校の建設においては、間伐材活用のために、本体工事の入札前に「分離発注」という形で木材の調達を行っている点が特徴です。
床材以外にも、内装、造作家具、建具、教室の机やいすに至るまで、あらゆる場所にふんだんに県産材が使われた、温かみのある建築物になっていることも特徴と言えるでしょう。
aizyu tokushima basementは徳島県徳島市にある、杉材をはじめとした徳島県産材を使用した多目的スペースです。環境保護などに取り組む事業体のシェアオフィスとして利用される他、各種会議、催し物、展示などに使われています。
aizyu tokushima basementでは、床・壁を始めスペース全体に県産材が使用され、節目を含めた木目を生かした造りが特徴です。壁の造作として、間伐材の年輪が見えるよう、短い木材を横に貼り合わせて、柱のように仕上げたものが使われるなど、より木を身近に感じられる雰囲気が魅力となっています。
参考:県産材を使用した多目的スペース|aizyu tokushima basement
徳島県では、県内にある森林の多くが私有林であり、管理放棄や境界の不明瞭化などの問題を抱えています。
また「徳島すぎ」に代表される良質な木材が主伐期を迎える中、普及促進と販路拡大が大きな課題にもなっています。
このような課題を抱えた徳島県では他の県に先駆けて、森林資源の活用を目指した条例やプロジェクトを策定し、県産材の普及と利用拡大に取り組んでいます。
さまざまな施策を通じて、ICTを利用したスマート林業の推進や、川上から川下までの連携強化などを具体的に進めていることが、徳島県の木材利用の特徴となっているのです。
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