短納期で木材調達するには?|川上から川下までさまざまな取り組みを解説

eTREE編集室

木材に携わる仕事をしている方の中には、木材調達の納期短縮に悩む方もいるのではないでしょうか。エンドユーザーの要望が多様化している中で、できるだけ短い納期で木材を供給・調達することは業界全体の課題ともいえます。

そこで今回は、短納期で木材調達するための方法や、納期を短縮する技術などについて解説します。

効率的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)構築に向けた取り組みも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

木材調達において短納期を実現するには?

木材調達を短納期で実現するために最も重要なことは、川上から川下までが適切に連携を取ることです。それぞれの過程での技術革新や工程の工夫などは必要ではありますが、その取り組みを潤滑に支えるSCMの構築が必要不可欠といえるでしょう。

現在、木材に関わるほとんどの業種で、木材調達の短納期化は大きな課題となっています。

その理由の一つは、エンドユーザーやプロジェクトのクライアントの要望です。

発注する側にとっては1日も早い完成、またはスケジュール通りの納期を希望するのは当然のことといえるでしょう。受注する側にとっても、短納期で完成させることは市場での競争力の強化につながります。

もう一つの理由は、コスト削減です。工事開始から完成までの工期を短くできれば、労働力や設備の時間も短縮され、コスト削減につながります。最初の木材調達で納期を短縮できることは、大きなコスト削減につながる可能性を秘めているといえます。

参考:令和4年度マーケットインによる安定供給体制強化促進事業成果報告書|一般財団法人日本木材総合情報センター

【川上での取り組み】木材供給の納期短縮に向けた対策

まずは、それぞれの段階でどのように木材調達の納期短縮を実現させていくのかという点について解説します。木材調達において「川上」にあたる林業の現場では、納期短縮に向けてどのような対策が取られているのでしょうか。

リードタイム短縮に向けたインフラ整備

林業に携わる人が少なくなっている中で、伐採や輸送などをするための大型機械の導入などが求められています。ですが、供給に関して必要なインフラ整備が進んでいないのが現状の課題です。

そんな中、2022年に(一社)日本プロジェクト産業協議会では「JAPIC政策提言」として、リードタイム短縮も可能とするインフラ整備についてまとめました。

重点項目となった内容は、以下の通りです。

  • ストックヤード(中間土場):拠点貯蔵施設の増強
  • 林道整備の更なる促進:コンクリート舗装、既設林道のグレードアップなど

災害にも強い林道を整備することで大型の林業機械の導入や、大型車による高速輸送を実現させ、コスト削減とリードタイム短縮を目指す、としています。

参考:JAPIC政策提言|(一社)日本プロジェクト産業協議会

スマート林業への変革

林業の現場でITの技術を活用して、森林管理を行ったり、林業の省力化、経営の効率化をはかったりするのがスマート林業です。森林クラウドによる森林資源の一元管理や、新しい林業機械の導入などを中心に変革が進められています。

現在、川上での運用として、航空レーザ測量による森林基盤の情報整備は進みつつあります。

一方で、個人情報や森林の境界に関する課題があるため、SCM全体としてデータベースの活用が進まないのが現状です。今後、国の主導で森林資源の情報が一元化され、さまざまな省庁や自治体のデータベースとも共有されることが期待されています。

情報が共有されることで、川上で需要の把握や予測が可能となるため、伐採から生産までのリードタイムが短縮されると考えられるのです。

参考:令和3年度スマート林業構築普及展開事業報告書|林野庁

【川中での取り組み】木材流通の短納期を目指す企業の取り組み

次に、川中とよばれる製材工場やプレカット工場で、木材の流通を短納期で行うために取り組んでいる内容について解説します。

木材のサウナ?水と石を使った乾燥技術|フルタニランバー

木材乾燥を人工的に行う場合に一般的には「蒸気式」「除湿式」「高周波」などの方法がとられます。その中で、石川県の木材販売会社であるフルタニランバーが開発したのは、改質水と抗火石による木材乾燥技術です。

改質水の加熱水蒸気と蓄熱・保温・遠赤外線効果を持つ抗火石でまるでサウナのように木材を包み込みます。木材の中心部まで蒸気が浸透すると、細分化された水分が熱によって気化し、乾燥する仕組みです。

この技術で、乾燥時間が30〜70%程度も短縮できることに加え、ヒビや割れが少なく、仕上がりに艶のある木材の生産に成功しています。

参考:改質水と抗火石の木材乾燥技術「woodbe」|フルタニランバー

森林整備からプレカット加工まで手がける|細川木材株式会社

長野県諏訪郡に本社を構える細川木材株式会社が手がけるのは、CAD入力による自動制御機能で加工するプレカット技術です。木材加工の技術者が減少する中で、プレカット加工は納期を短縮しながら、職人の精度を超える製品を生み出す力があります。

さらに、細川木材株式会社の強みは、山林部を持っていることです。山林部では、造林作業・素材生産・支障木伐採などを中心とした森林整備を行っています。森林整備からプレカット加工まで一貫して手がけることで、伐採から製材までにかかる時間を短縮できるのが大きなメリットといえるでしょう。

参考:細川木材株式会社

豊富な在庫で安定供給|高田製材所

高田製材所は、福岡県に本社を構える製材所です。取り扱っている樹種が非常に多く、すでに乾燥が済んでいる状態のものをストックすることで、短納期にも対応しています。

高田製材所で取り扱う樹種は国産材100種、輸入材150種の計250種におよびます。

さらに年間2,000m³の原木を乾燥状態で、常時ストックしていることが強みです。

樹種が持つそれぞれの特徴に精通していることで、適材適所での提案や、金額などで合わなかった時の代替提案などを可能とし、顧客のニーズに短納期で安定供給できる体制を作っているといえるでしょう。

参考:有限会社高田製材所

【川下での取り組み】木材調達における短納期への工夫

次は、工務店や施工業者、設計事務所など、川下での取り組みについて解説します。木材を調達する側にある川下では、納期短縮を実現するためにどのような工夫が行われているのでしょうか。

基本計画時|計画段階から調達の検討をする

公共の建築物を作る際に近年行われているのが、基本計画段階から木材の調達について検討することです。公共建築物は規模が大きくなるため、一般流通材の規格ではない木材が必要になることも多く発生します。

設計が完成してから調達しようとしても、山林から必要な樹種を大量に伐採、加工、乾燥などの工程が必要になり、時間もかかります。

そのため、基本計画段階から、川中、川上と連携を取りながら地域材も含めて検討することが、スムーズな調達につながるのです。

参考:施工管理・工事監理に関する留意事項集|国土交通省

発注時|発注方式を使い分ける

特に公共建築物の木材調達時に使われる発注方式としては、以下のような方法があります。

  • 材工一括発注
  • 材工分離発注

材工一括発注は、基本計画が完成し、施工者が決定した後、施工者自身が木材調達をする方法です。発注する側の自治体や設計者の負担は少なくなるものの、時期によっては必要な木材が揃わないこともあることがデメリットとしてあげられます。

一方、材工分離発注は、基本計画が完成した段階で施工者を決定する前に、発注側の自治体などが必要な木材を調達した上で施行者に支給する方法です。

伐期に合わせた調達が可能となるため、地域材も含めて木材調達がスムーズになることがメリットです。

参考:木材の発注方式と工程計画|一般社団法人 木を活かす建築推進協議会

木材調達を短納期で実現するサプライチェーンの実例

木材調達を短納期で実現するためには、それぞれの段階で、技術開発や取り組みの工夫を行った上で、最適なSCMを構築する必要があります。

国土交通省でも「安定的な木材確保体制整備事業」として地域の中小工務店、木材関連事業者などで構成されたグループによる木材確保のための取り組みに支援を行うなど、体制の整備を進めています。

ここでは、短納期で木材調達を目指すサプライチェーンの実例を紹介します。

地域型木材サプライチェーンと木造応急仮設住宅供給網構築事業|熊本県

熊本県では、森林パートナーズ株式会社の国産木流通システム「森林再生プラットフォーム」を活用して「地域型木材サプライチェーンと木造応急仮設住宅供給網構築事業」を実施しています。

この事業は、国土交通省の「国内木材供給サプライチェーン構築事業」の一環として採用されたものです。熊本県の中小工務店3社と製材事業者、原木供給者2団体が一体となって、体制を強化、熊本震災や豪雨災害を受けた地域への木材仮設住宅の提供体制を整備しています。

参考:独自の森林再生プラットフォームで国土交通省事業を推進|森林パートナーズ株式会社

母船式木流システム|株式会社トーセン

栃木県に本社を構える株式会社トーセンが取り組むのは「母船式木流システム」と呼ばれる仕組みです。提携する製材工場が得意分野を活かして生産した木材は、母船となる拠点向上に集められます。

そして拠点工場で、集まった木材を乾燥と加工を行って製品化するため、製品の一元的な管理と安定供給が可能となっているのです。

母船式木流システムによるSCMは、群馬から八溝山系にかけて北関東を斜めに横切る形で存在する山林エリアの森林資源を活用するため、関東平野の山裾に17の製材工場と6の母船工場を配置しています。

参考:母船式木流システム|株式会社トーセン

ぎふの木ネット協議会の家づくり

岐阜県産材を使った家造りを目指して活動する、230以上のさまざまな企業・行政・学術機関の連携チームとして設立されたのが「ぎふの木ネット協議会」です。

「ぎふの木ネット協議会」では県産材を利用した家作りを推奨するために、以下のようなサービスを提供しています。

  • 木造建築に関する中立的な立場での相談受付
  • 商品や助成金など、木造建築に関する最新情報の発信
  • 希望に添った建築会社や不動産会社の紹介
  • ワンストップ情報背インターとしての役割

参考:ぎふの木ネット協議会の家づくり|ぎふの木ネット協議会

まとめ

今回は、木材調達を短納期で実現するための取り組みや技術など、さまざまな工夫について解説しました。プロジェクトとしてのスケジュールを厳守することや、エンドユーザーの納期短縮の要望に応えるためには、生産・加工・設計の各現場での工夫や技術開発が必要不可欠です。

さらに重要なことは、そのような新しい技術や工夫、取り組みを支える、効率的な木材SCMの構築といえるでしょう。ITを活用したスマート林業や安定的な木材確保をめざした木材SCMの取り組みなどが行われています。

データベースの一元化で、川上が的確に需要を把握・予測でき、ITを活用したスマート林業で伐採から製材までの時間が短縮できれば、短納期での木材調達につながるのではないでしょうか。

森未来ではITを駆使した効率的な木材流通の実現に向けて、All Wood Platformをビジョンに日々精進しています。また全国の木材事業者とのネットワークもあり、短納期や地域材といった木材の調達に関わる部分を強みとしています。木材調達のご相談があれば、ぜひお問い合わせください。

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