共催セミナー
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記事公開:2022.11.2
2022年8月20日
東京(森未来セミナールーム)
8月20日(土)16時~
アトリエフルカワ一級建築士事務所/森未来共催「森と建築を考える」第六回セミナーを開催しました。
第六回のテーマは「木造とは1〜伝統と現代〜」でした。
日本の建築物の大半を占める木造建築物。寝殿造や書院造など、時代によって様々な様式が生まれました。日本建築を学ぶ上で建築史という観点から時代背景や建物の構造を学びますが、今回のセミナーでは古来より受け継がれてきた日本の建築における木材の扱い方に注目した内容でした。
今回の講義では「鎌倉的な」「数寄屋的な」木材の扱い方を、現存する建築物の写真や断面図を交えて検証しました。
地震が多い日本では壁面ではなく柱や梁といった木組みそのもので建築物の耐力を確保させ、地震が起きた場合でも力を分散させる技術が伝統工法として培われてきました。
金物を使わず木材を生かした仕口や継手を用いて組み上げています。
地震が発生した際はわずかに変形することにより力を吸収し受け流すことが可能です。そのため、許容範囲を超えるほどの大きな地震でも建物は大きく歪むものの、全壊しづらい特徴があります。
一つ一つの接合部は金物使用時ほど強くはありませんが、接合部の数を増やし建物のブレを防ぎます。西洋の建築物のように力を1箇所に集中させている構造の場合、地震が発生した際建物が崩壊してしまう可能性が非常に高いですが、日本の伝統的な建築物の場合、構造物が曲がったり変形することによって、建物の崩壊を防ぎます。木組みが緩んだ場合でも締め直すことが可能です。
鎌倉的建築物では柱と貫を強固で複雑に組み合わせ、壁や天井を多用せず美しい木組みをあえて魅せています。強固な構造を仕上げ材で隠すことなく美しく見せていることが特徴的です。組物が段々になるよう接合部の数を増やし軒天を伸ばすことによって建物全体のバランスをとっています。お話の中で浄土寺浄土堂をご紹介して頂きました。壁や天井を設置せずに美しく組み上げられた構造材をそのまま見せ、かつ装飾性も兼ね備えているため、圧迫感のない広々とした空間を確保し、鎌倉的建築物を非常にわかりやすい形で表していると感じました。
二つ目にご紹介いただいた数寄屋的建築では、鎌倉的建築とは違い、建築物の意匠と構造を分けている考え方でした。例えば軒裏の垂木や床柱など、実際の構造材としてではなく、あくまで意匠性のために設置しています。下記の断面図にも記されているように屋根を支えている構造材と実際に見えている部材は異なっていることがわかります。
建物の重みや外部からの力を複雑な組物を無数に用いて分散させるのではなく、大きな梁に屋根全体の重みを分散させて建物のバランスをとっています。
鎌倉的建築と数寄屋的建築、いずれもしっかりとした軸組を作り内部空間に自由性を持たせているのは日本の伝統構法の特徴です。建物の重さや外からの力を分散させ、各部材にかかる負担を軽減させています。強固に固めた建築で地震など外部の力から耐え抜くのではなく、自然の脅威に無理に抗うのではなく変形させ力を受け流すことで地震が多い土地にも関わらず長い年月崩れずに現存してきました。
また、前回の大工の待遇の話につながる形でなぜこのような古来より続く伝統工法が使われなくなってしまったのか説明して頂きました。
大工による手作りの建築はコストや時間が必要です。建築物のコストを削減するためには、手間や工数を減らし、人件費を削減する必要があります。そこで工場であらかじめ大まかなパーツを作り建設現場ではあとは組み合わせるだけの、いってしまえば誰でも作ることが可能で長い工数のいらないシステムを構築しました。
現在ではこれまで使われてきた伝統的な仕口を使用する機会は激減し、プレカット工場においても特殊な加工機がなければ大工が作るような複雑な仕口を作ることができません。
本来、長ければ家屋であっても長い場合は200年ほど住み続ける日本の木造建築では、一部箇所が腐った場合でもその都度新しいものを継ぎ変えて修復しながら使い続けてきました。この様な修繕方法は、宮大工など特殊な技術が必要ですが、現代において宮大工の人口は全国で1000〜2000人ほどしか残っていません。一度途絶えた技術を再生させるには多大な時間やコストを要します。建築分野含め長い歴史の中で受け継いできた伝統技術を途絶えさせないようなマネジメントが非常に大切であると学びました。
先日古川先生がデンマークに出張にいってきたとのことで、セミナーの最後にはお土産抽選会も実施されました。日本にはない調味料や、デンマークの建築事情など、非常に興味深いお話が満載でした。
次回、第七回のテーマは「木造とは2 〜軸組工法〜」です。
さらに時代を進め、戦後に定められた在来軸組工法の考え方について取り上げます。前回、今回と続き木造と大工の関係についても触れていきます。
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