サステナブル
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森未来は設計士の皆様に寄り添い、木材に関するどんなお悩みも承ります。このコラムでは、「サステナブル×森未来」と称し、持続可能な社会に適した木材について全3回にわたって特集します。
第2回の記事はこちら
なぜ、木材を選ぶのか / サステナブル×森未来#1
そして第2回は、地域産材について。
地域産材を使うことは、地域の経済を回し、地域の山を守ることにつながります。
しかし、地域産材を使っても地域への還元が少なく、価格も上がってしまう、というケースを見ることがあります。
地域産材利用によって発信できるストーリーと地域産材利用のポイントを特集します。
地域産材って地元にゆかりがあってなんだか良さそう、というイメージをお持ちの方も多いと思います。
地域産材を使用すると、なぜサステナブルなのでしょうか。
地域産材を選ぶことで、どんなストーリーを発信することができるのでしょうか。
第一に挙げられるのは、地元の木材を使い、地元の業者で製材・加工することによる、地域社会への経済的な貢献です。地域に根付いた建築として、地域住民に愛着を持ってもらえる建築をつくることができます。
しかし、地域産材利用が地域にとって意味するのは、それだけではありません。地域の木材業者や林業家の存続は、地域の山を守り、地域を災害から守ることにつながります。
現在、日本の森は危機的な状況にあります。
森林の危機というと過剰な森林伐採を思い浮かべ、木材を使わないほうが良いのでは?と考える方もいるかもしれません。実際、東南アジアや南米アマゾンでは現在森林が急激に失われていっており、その原因として違法伐採が国際的に問題となっています。違法伐採者は木を盗伐し、跡地に植林をしないため、森林が消えていきます。最近ではこの森林破壊とコロナウイルス感染拡大に相関関係がある可能性も指摘されています※。
適切に管理された森林で合法的に伐採されたことが証明されている「合法木材」を選択すること、違法な木材を使わないことがとても大切なのです。
※2020,林野庁「ITTO(国際熱帯木材機関)について 」
しかし、日本の森林が危機的な状況にある原因は、森林伐採ではありません。逆に木を伐らないことが山や森を苦しめています。
森林、特に人工林は人による管理が必須です。しかし、林業の担い手不足など様々な要因から、現在、日本の山には手入れが不十分な森林が多く存在しています。
森林は土壌を根で固定して土砂災害を防いだり、雨水を土壌に蓄えゆっくりと流して川の洪水を防いだり、さまざまな生物の生息地となったりしてくれます。しかし、手入れが不十分な森林はうっそうとして暗くなり、本来の機能を充分に発揮しません。さらには荒廃した山に大量の木が生えていることで、大雨の際に大量の木が倒れ、崩壊した土砂とともに大量の流木が押し寄せて土砂災害の被害を甚大にします。このような事態が2017年の九州北部豪雨などで発生し、大きな問題になっています。
森林が本来の機能を発揮するために必要なのが、きちんとした計画に基づいた人の手による管理です。林業は植林→手入れ→伐採のサイクルにより健全な森林を維持していく営みです。木材が使われず、伐採が行われなければ、山は荒廃していきます。
実は今、日本の山には伐採適齢期を迎えた木がかつてないほど大量に存在しています。高度経済成長期に一斉植林された人工林が伐採適齢期を超えてきているためです。この木材を資源として活用するか、荒廃させてしまうか。それが今まさに問われているのです。
現在、丸太価格は国産材の方が輸入材より安くなっています。しかし、流通体制などさまざまな問題が絡み合い、日本の木材自給率は37.8%(2019年,林野庁)にとどまっています。林業の利益だけでは山や森を維持していけないため、多くの税金が使われているのが現状です。そのさらなる拡充のために、2024年度から国内住民全員を対象に1人年額1,000円の「森林環境税」の課税が始まりますが、背景にはこのような林業の危機、森林の危機、日本の山ひいては地域の安全の危機があるのです。
地域産材を使うこと。それは、地域の経済を回し、地域の山を守ること。
だからこそ、地域産材を使った設計は「地域に根付き、サステナブル」という強いメッセージを発信できるのです。
最終回となる第3回の記事はこちら
「地域産材」使用の落とし穴 / サステナブル×森未来#3
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