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「日本に森林はたくさんあるのに、どうして国産材はあまり使われないの?」という疑問を感じていませんか。国産材は価格が高いイメージがあり、外国産材の方がメジャーと感じる人も多いのではないでしょうか。この記事では、国産材があまり使われない理由を、日本の林業における問題点をふまえて解説しています。
上記の方におすすめの記事となっていますので、ぜひご一読ください。
目次
国産材は価格が高いイメージがあるのではないでしょうか。しかし、国産材の素材(丸太)価格は、実は高くはありません。国内における木材価格の実情を確認していただくために、まずは以下のデータをご覧ください。
【令和3年度の素材(丸太)価格】
素材 | ㎥価格 |
国産スギ | 16,100円/㎥(前年比3,400円/㎥高) |
国産ヒノキ | 25,900円/㎥(前年比8,700円/㎥高) |
国産カラマツ | 13,200円/㎥(前年比700円/㎥高) |
アメリカ産マツ | 26,600円/㎥(前年比5,600円/㎥高) |
アメリカ産マツと比較すると、国産材の素材価格は決して高くはなく、むしろ安いことがわかります。また、下図のような製材品価格の推移をみても国産スギ・ヒノキ製材品は米ツガ正角と比較しても安価なことがわかります。
令和2年における日本の木材自給率は41.8%です。10年連続で自給率が上昇した結果で、一番低かったときには、なんと木材自給率が18.8%だったこともあります。
木材自給率が上昇しているとはいえ、まだまだカナダやアメリカ、EU、ロシアなどの国からの輸入に頼っているのが現状です。外材の進出は、昭和39年の木材貿易完全自由化から始まり、さらに戦後の木材需要を国産材のみではまかないきれないことから一気に普及しました。当時は外材の方が国産材より高価でしたが、それでも外材を利用してなんとか需要と供給のバランスが保たれていました。
そしてその頃、無理な伐採が祟り日本各所でハゲ山が目立ち始めていきます。国はその対策としてスギ・ヒノキを大量に造林し、災害緩和と国産材資源の確保に取り組みました。
現在、その頃大造林したスギ・ヒノキ人工林が伐期(伐り時)を迎えており、その利活用に向けた施策が多くの自治体で見られます。
国産材の素材・製品価格は決して高くないのにもかかわらず、なぜ国産材の利用は促進されないのでしょうか。考えられる理由を挙げていきます。
まず、考えられる理由の一つは「国産材の価格は高い」といったイメージを払拭できない点です。実際にアメリカ産マツと比較して日本の木材は安い点に驚いた方もいるのではないでしょうか。
このようなイメージの原因は、
というようなものがあげられます。
また一般社団法人日本木造住宅産業協会が行なったアンケート調査によると、住宅メーカーなどが国産材を使用しない理由の第1位は「外国産に比べて価格が高い」から。60%以上もの会社がこのような認識を持っており、改めて「国産材の価格は高い」イメージが強固であることがわかります。
参考:林野庁
次に国産材が使われない理由として考えられるのは、品質の側面です。木材はしっかりと乾燥させないとひび割れや反り、曲がりにもつながります。品質を保つためには、木材を乾燥させた「乾燥材」を使用する必要があるのです。
しかし、日本では「乾燥材」の定義そのものがあいまいです。どれほど木材を乾燥させて含水率を下げると「乾燥材」と呼ぶのかはっきりとした基準はなく、また乾燥のスケジュールも各会社によってまちまちです。ひとえに国産材といっても企業によって乾燥具合が異なるため、品質が安定しないといった体制も使われない理由の一つです。
ここで「住宅メーカーが国産材を使用しない理由」をご紹介します。一般社団法人日本木造住宅産業協会が行なったアンケート調査の結果は以下の通りです。
参考:林野庁
価格や品質に関する理由が特に多く挙げられていることがわかります。価格が高いイメージを払拭するのはもちろん、JASや含水率、ヤング率を表示し、品質を担保することが求められるでしょう。
また「必要なときに必要な量を確保できない」といった声も多かったため、解説していきます。
木材の需要が高くなったからといって、供給側はすぐに生産量を増やせません。木材を生産するためには、苗木を植えてから木材として利用できるまで最低でも40年ほど必要です。
そのため、生産量を増やすために木材の伐採時期を早めた場合、その後しばらくは伐採量が減る可能性があるでしょう。新たに作業道を作って伐採を行う場合も、やはり時間がかかります。
そもそも日本では、林業経営者が事業規模の拡大を考える際、事業地を確保するのが難しい環境です。林業経営者が事業を拡大して木材生産量を増やすのが難しいため、需要の高まりにも対応しにくいのかもしれません。
国産材の利用が促進されない理由は、価格や品質がネックであるのに加え、供給側が急激な需要増に対応しにくい点を紹介しました。この章では、国産材を使うメリットはどのような点があるのか解説していきます。
国産材の利用を増やせば、地域の活性化にもつながります。日本の林業は人材不足が進み、高齢化も深刻です。そのような現状で、国産材を使用して林業が活性化されれば、新たな雇用が生まれ地域に潤いをもたらすでしょう。
国産材を使用することは、林業の活性化だけでなく地域の暮らしを支えることにもつながります。そのためには国産材を国内に流通させるための「仕組み」を整えることが大切になってくるでしょう。
日本の森林が保護される点も、国産材を利用する大きなメリットです。現在、日本では整備されずに放置された山林が多くあります。国産材の利用が増えれば、森林手入れを担う人達の収入が増え、その分、整備されていない森林に手を回すことができます。
整備された森林は、台風や豪雨などの災害から私たちを守ってくれます。木の根が土壌を守り、土砂災害や地滑りを防いでくれるからです。ちなみに、放置された森林は災害が起こりやすくなっています。木と木の間が狭く、日光も当たりにくいため、根がはりにくいからです。
つまり、国産材の普及は災害リスクを減らすことにもつながります。
国産材を利用することで、地域活性化につながるのはもちろん、森林が保護されて災害のリスクが減ることがわかりました。この章では、国産材を普及させるために、どのような取り組みが行われているのかを紹介していきます。
国産材を普及させる取り組みの例として、公共施設で国産材を利用する取り組みが行われています。例えば、神奈川県川崎市では公共・民間建築物における国産木材利用に取り組んでおり、市内の国産木材利用事例をホームページ上で紹介しています。
国産材を用いて保育園や小学校、市民ホールを建設し、国産材の利用を普及させるための啓発活動を行っているのです。市民は公共施設の利用を通して、国産材の利点を知るきっかけにもなるでしょう。
参考:川崎市
木材の生産過程において、木が密集した際に間引いた木材を「間伐材」と呼びます。国内における間伐材の利用を促進することは、適切に管理された森林を増やすことにもつながるのです。
近年、間伐材は建築材や合板・集成材材料、バイオマス燃料としての利用が拡大しています。間伐材を用いた商品も多く開発されており、例として文房具やペット用品、工作の材料などがあります。
間伐材を用いた製品に表示される「間伐材マーク」を、商品選択の基準とすることで森林整備にも貢献できるでしょう。
国内材の利用を促進するために、さまざまな補助金制度があります。
例えば林業・木材産業成長産業化促進対策の「木造公共建築物等の整備」は、地域材の利用を条件に公共建築物の木造化や木質化を支援しています。対象施設の例は、文化センターや図書館、児童館等です。
原則的に、公共建築物の木造化を行なった場合は建築工事費の15%以内が補助され、木質化を行った場合に木質化事業費の2分の1以内が補助されます。
補助金制度によって国産材の利用が促進されれば、住宅などの建物を建築する際に国産材の使用を選択する人も増えるでしょう。
参考:非住宅建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧|林野庁
木材への親しみを深めるための「木育」への取り組みが日本全国で行なわれています。
例えば、長野県伊那市では木育の一環として、子どもが生まれたら木の贈り物である「ウッドギフト」をプレゼントしています。赤ちゃんだけではなく保護者も木に親しむきっかけになるはずです。
その他にも、地域材を使用した工作教室の実施や、地域材が使用された木棺の研究も行われており、一生を通して木材利用の意識を高めるきっかけが用意されています。木育によって木材への親しみが深まることで「国産材を利用したい」と考える人も増えるでしょう。
森未来では「Sustainable Forest」をミッションに掲げ、国産材の普及に全力で取り組んでいます。また、全国の木材事業者とネットワークをもっており、様々な産地の木材調達が可能です。気になる方は、ぜひお問い合わせください。
本記事では、国産材の利用が進まない理由について解説しました。価格が高いイメージや品質、需要が高まったときの対応が難しい点などが、国産材を普及させるための大きな課題です。これらの課題をクリアできるような仕組み作りが求められます。
国産材を普及させるためにはさまざまな取り組みも行われています。まずは日本の林業における現状を認識し、国産材を普及させるための取り組みに参加してみてはいかがでしょうか。
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