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建築現場やDIYなどで木材を扱う方にとって、端材や廃材など廃棄しなければならない木材の活用方法について考えるのではないでしょうか。
廃棄予定の木材を活用する方法のひとつとして、リサイクルやリユースと並んで「アップサイクル」が注目されています。
本記事では「端材を活用して何か作りたい」「廃材をもっと有効活用したい」と考える方にむけて、環境にもやさしい木材のアップサイクルについて解説します。
アップサイクルとは、廃棄予定のものを素材が持つ特徴を生かしたまま、デザインやアイデアなどの付加価値を持たせて新しいものへと生まれ変わらせることです。
廃棄物を減らすことに加えて、個性的なデザインや独自の付加価値を持つ製品として作り替える取り組みは、クリエーターの創作活動からビジネスの現場まで、幅広い分野で取り入れられています。
アップサイクルは、廃棄物の再利用という点でリサイクルとよく似ています。
しかし、アップサイクルとリサイクルの大きな違いは、もともとの形や特徴を残しつつ再活用することです。
例えば、捨てられる木材を細かく砕いてチップとして再利用するのはリサイクルですが、廃材の色合いや形を生かして家具を製作するのはアップサイクルにあたります。
作り変えるという意味では、リメイクに近い手法ですが、アップサイクルは、より付加価値の高いものに生まれ変わらせる点が大きな違いといえます。
アップサイクルに使われる木材には、下記のようなものがあります。
ここでは、アップサイクルに使われる木材が、それぞれどのような用途で利用されているのかについて解説します。
建築現場や木材を扱う工場などで発生する「端材」をアップサイクルした製品は数多く見られます。
例えば、群馬県みなかみ町にある桐製品専門店「桐匠・根津」では、製品を作る時に残る端材を利用して「PAULOWNIA LEAF(ポローニア リーフ) 」という雑貨ブランドを立ち上げました。
桐製品を製造する時に出る端材で、まな板やパンケースなど桐の特性を生かしたキッチン小物を製作しています。
また、北海道で木製品の工房を営む丹野製作所では、端材を使ったネクタイピンの製造をしています。
その他にも、個人のクリエーターがアクセサリーを製作するなど、端材は幅広い用途でアップサイクルに利用されているのです。
古い家の解体や建築現場などで多く発生する廃材も「古材」と呼ばれ需要が高まっています。環境省が「古材リユースのすすめ」としてリーフレットを作成するなど、活用を積極的に推進している注目の木材です。
多くの古材が、自然に乾燥され強度が高い木材となっていることや、経年変化による独特な味わいが人気で、内装材やDIY用の材料としてもアップサイクルされています。
古民家から回収された古道具や古い家具も、アップサイクルの材料として人気です。
特に、古道具には独特のデザインや経年変化による色合いが加わり、その特徴を生かした家具やインテリアとして再活用されるケースが多くなっています。薬たんすや階段たんすなどは、近年の家具には見られない独特のデザインと言えるでしょう。
また、昔ながらの家具は上質な木材を使用していることも多く、デザインや色合いだけでなく、強度的に優れていることもアップサイクルの素材として利用される理由でもあります。
輸送に使われる木製パレットやワインの木箱、ワイン樽などは、比較的入手しやすい上、簡単にアップサイクルできるため、人気の高い木製品です。
パレットは、ソファやベッドなどの大型家具を始め、エクステリア用の材料としても使われます。
ワインの木箱は積み重ねるだけで棚としても利用できるだけでなく、店頭のディスプレイとしても目にする機会も多いのではないでしょうか。
ワイン樽は上に天板を乗せればテーブルとして活用できるため、パブなどでも良く見られる光景のひとつになっています。
自然に倒れてしまった木や剪定した枝、流木などもアップサイクルの材料として利用されています。
例えば、小石川植物園では風雨によって発生する大量の倒木、落枝などを利用してアップサイクルしたベンチが作られました。たくさんの枝を集めて立てたうえで、身体の曲線に合わせて形を整えてあるのが特徴です。その他にもベンチ制作時に発生した木くずを固めてテーブルの天板にし、枝をテーブルの脚にするなど、廃材が無駄なく活用されています。
参考:UPCYCLE FURNITURE PROJECT|JAMZA
木材をアップサイクルしたいと考えた時に、どこで入手するのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。ここでは、木材の入手方法について解説します。
廃棄物処理業者や建築現場、解体処理現場など大量の廃材が出る現場で、作業する方と交渉すると、廃材をもらえる可能性があります。とはいえ、作業中に話しかけるのは危険も伴ううえ、タイミングによって迷惑になるため、無理な交渉は避けましょう。
廃棄物処理業や解体作業をおこなう業者から、地元の掲示板などに譲渡の情報が出ることもあるため、地道に確認するのが良いでしょう。
家庭などで自然に倒れた木や剪定した木は、一般的には可燃ゴミとして廃棄されるため、住人と交渉してもらい受けるという方法もあります。空き地や山などで倒木を見つけた場合にも、所有者の許可をとったうえで持ち帰るようにしましょう。行政が管理する公園などでは、持ち帰りが禁止されている場合もあるため、注意が必要です。
また、流木は、雨や台風後の海や川に多く漂着しています。
雨や風、増水などの危険が無くなった安全なタイミングを見計らって調達しましょう。
良い素材を見つけられるようになると、拾いに行くのも楽しみのひとつになるかもしれません。
フリーマーケットやオークションサイトで、古い家具や木製品、古材などが出品されていることがあります。個人での出品は数が少ないながらも、持ち運びとDIYしやすい大きさにカットされていることもあります。
廃棄物処理の業者などが、大量の廃材を出品していることもあるので、時々チェックすることで、比較的手頃な価格で手に入れることも可能でしょう。
色合いや大きさにこだわりがある場合やまとまった数量が必要な場合は、古材販売店などからの購入が最も確実な方法です。古材販売店はネットでの販売をおこなっている店舗も多いので、近くに販売店がなくても購入可能でしょう。
ここからは、木材を使ったアップサイクルをビジネスとしておこなっている実例について紹介します。
「gleam」は廃材を原材料に使って家具を製作しているブランドです。
「旅する家具」をコンセプトに、主にインドネシアから廃材を輸入し、アップサイクルした家具を製造販売しています。
素材となるカヌーや線路の枕木などには、良質なチーク材が使われていることが多く、アップサイクルすることで、さらに長い間、使い続けることができる家具になるそうです。
今後、日本を含む、インドネシア以外の各国の廃材を使った商品化を目指しているため、さらなる成長に期待が寄せられています。
参考:gleam
リビルディングセンタージャパンは、長野県諏訪市で家屋の解体や片付けの現場から捨てられてしまう予定にある古材や古道具を「レスキュー」するリサイクルショップとして事業を始めました。
現在は、古材を使用した空間のデザインや、オーダー家具の製作などを行っています。
リビルディングセンタージャパンが手がけた物件や納品した製品を使用する店舗は、長野県を中心に、北は岩手から南は大分まで、全国16都道府県で70以上に拡がっています。
古材の味わいや癒やしの空間を求める流れが大きくなっていることがうかがえる事例です。
徳島県勝浦郡上勝町にある「RISE&WIN」は、廃材や古道具を用いて建設されたブルワリーです。
上勝町は、2003年に自治体として日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、ゴミを出さない社会を目指していることで知られています。
自治体としてのゴミ収集はおこなわず、町営のごみステーションに住民がゴミを運び、45種類に分別して、再資源化を図っています。
RISE&WINはこの活動に賛同し、2015年に上勝町産材を始め、ごみステーションから拾った廃材、解体される家屋から出た古材や建具などを利用して、特徴的な建物を建設しました。
参考:空き家や古い家から生まれたアップサイクル事例集|ハローリノベーション
2022年10月に岐阜県土岐市にオープンしたイオンモール土岐店では、リサイクル建材を多数採用したことでも話題となりました。
今後、イオンモールでは「建設分野のSDGs実現に向けた資源循環システム」を構築するため、新築時は解体時のリユース材とリサイクル建材を使用し、リサイクル不可建材は使用しない、という方針です。
多数の顧客の目に触れる建築物で、リユースやリサイクル、さらにアップサイクルまで含めて取り組むことは、今後の木材アップサイクルへの分かりやすい事例となることでしょう。
参考:アップサイクル、天然資源…、建材の選定基準が変わる|日経クロステック
アップサイクルとは、廃棄されるものの特徴を生かしたまま、デザインやアイデアによって付加価値をもたせて作り替えることです。
木材を使用したアップサイクルでは、端材を使ったアクセサリーや小物の制作、廃材や古道具を内装に使用するなど、クリエーターの創作活動からビジネスまで幅広く活用されています。
木材をアップサイクルすることは、廃棄するものを減らせる環境に優しい取り組みであるだけでなく、木材の持つ新たな価値に触れられる機会にもなることでしょう。
廃棄予定の木材が手元にある時には「アップサイクル」というアクションで、再活用してみるのはいかがでしょうか。
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